スズキ・サベージ

スズキ・サベージ：個性的な単気筒エンジン搭載クルーザーの歴史

スズキがかつて製造販売していたオートバイ「サベージ(Savage)」は、力強い走りと独特の存在感を放つクルーザータイプのバイクとして知られています。正式名称は型番のLS（エルエス）で、そのネーミングは英語で「どう猛」「荒々しい」を意味する言葉に由来しています。

1986年に登場したサベージは、シリーズを通して排気量別に複数のモデルが生産されました。しかし、1990年代前半には日本国内での販売を終了。その後は輸出仕様が海外市場で販売され続けました。特に北米市場では2004年、スズキのクルーザーモデルが統一ブランド「ブルバードシリーズ」に統合されたことに伴い、LS650は「ブルバードS40」へと名称変更されました。

主要モデル：LS650サベージとLS400サベージ

LS650サベージ

1986年5月に発売されたLS650サベージは、ボア94.0mm×ストローク94.0mm、652ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。スペックは最高出力30ps/5,500rpm、最大トルク4.5kg-m/3,000rpmと、一見すると控えめですが、低速域でのトルクは同クラスのスーパースポーツにも引けを取らない力強さを発揮しました。ベルトドライブによる静粛性と、単気筒エンジンの鼓動感も相まって、上質な乗り味を実現していました。

既存のアメリカンタイプが既存車種のシート高を低くし、アップハンドルを装着しただけのものだったのに対し、サベージは車体から専用設計された本格的なアメリカンバイクでした。最大の特徴は、当時アメリカンバイクといえばV型2気筒エンジンが主流だった中、直立単気筒エンジンを採用していた点です。これは、イージーなライディングを楽しむアメリカンバイクという従来の概念に、新たな方向性を与える試みだったと言えるでしょう。しかし、単気筒エンジンの魅力である独特の音や振動が、バランサーの採用によって抑えられてしまったことや、デザイン面での平凡さが、日本国内での販売期間を3年程度に短縮する要因となりました。

それでも、単気筒エンジンを搭載したアメリカンというコンセプトに魅力を感じるユーザーは多く、現在でもカスタムベースとして人気を博しています。日本での販売終了後も輸出用モデルの生産は継続され、「LS650」「サベージ」「パスファインダー」などの名称で世界各国で販売されました。北米では2004年まで「サベージ650」として販売され、2005年からは「ブルバードS40」として販売が継続されています。

LS400サベージ

1987年1月に発売されたLS400サベージは、LS650をベースに排気量をダウンサイジングしたモデルです。ボア88.0mm×ストローク65.2mm、396ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載し、最高出力は24ps。LS650に搭載された電動プランジャーオートデコンプ機能は省略され、駆動方式もベルトドライブからチェーンドライブに変更されています。アメリカンブームを背景に何度か再発売されましたが、現在は製造・販売は終了しています。

サベージの魅力とその後

サベージは、単気筒エンジンによる独特の鼓動感と、扱いやすい車体、そしてカスタムベースとしての高いポテンシャルを備えた個性的なバイクでした。日本市場では短命に終わりましたが、海外、特に北米市場では根強い人気を誇り、スズキのクルーザーモデルの歴史に大きな足跡を残しました。現在でも、中古市場でその姿を目にすることができ、多くの愛好家によって大切に乗り継がれています。その独特のスタイルとメカニズムは、多くのライダーに忘れがたい印象を与え続けていると言えるでしょう。

まとめ

スズキ・サベージは、アメリカンバイクというカテゴリーに新たな風を吹き込んだ革新的なモデルでした。その個性的なスタイルとメカニズムは、時代を超えて多くのライダーを魅了し続けています。日本市場での販売終了後も、海外市場で販売が継続され、カスタムベースとしても高い人気を誇るサベージは、スズキのモーターサイクル史において重要な存在であり続けています。

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