スズキ・ボルティー

スズキ ボルティー：気軽に乗れる、懐かしさと実用性を兼ね備えた250ccロードバイク

1994年から2004年までスズキが製造販売していたボルティー(Volty)は、250ccのネイキッドタイプのロードバイクです。その車名は、馬術用語の「VOLTE（ボルト）」に由来しており、ライダーの意思に忠実なバイクを目指したというスズキの想いが込められています。

ボルティーの魅力：扱いやすさとクラシカルなデザイン

ボルティーは、高性能を追求するのではなく、気軽に乗れて日常使いに適した仕様に設計されました。特に、レトロ調デザインが人気だった時代背景も相まって、メッキを多用したクラシカルな外観は多くのライダーから好評を得ました。加えて、同クラスのバイクと比べて低価格だったことも、ボルティーの人気を後押ししました。特に、1994年末から1999年半ばまでの5年間は、価格改定前ということもあり、高い人気を誇りました。

スペック面では、絶対的な高性能はありませんでしたが、信頼性の高さや扱いやすさが評価され、オートバイとしての基本性能の高さも魅力の一つでした。車体が軽量でバランスが良い設計のため、シングルディスクブレーキ（後期モデルは2ポットキャリパー）とドラムブレーキの組み合わせでありながらも、優れた制動力を発揮します。

また、250ccクラスのバイクとしてはコンパクトな車体と750mmという低めのシート高により、足着き性が非常に良い点が挙げられます。そのため、女性ライダーにも人気がありました。ただし、身長の高いライダーにとっては、膝が曲がりすぎて窮屈に感じる場合もあります。

デザインと快適性：こだわりの詰まった車体

ボルティーのデザインは、童夢が担当しました。GN250のような無骨なスタイルとは異なり、レトロ調の洒落たデザインが特徴です。多くのロードバイクに見られる、運転席と助手席が一体となったシートではなく、運転席と助手席が独立しているのもボルティーの特徴です。これにより、運転席は広く快適な座り心地を実現し、長時間走行でも疲れにくい設計となっています。

運転姿勢は、前傾姿勢のレーシングモデルとは異なり、リラックスできる自然な姿勢で乗れるよう設計されています。出荷時のセッティングでは、身長155cm～170cmのライダーが最も快適に運転できるよう調整されています。身長の高いライダーは、シートの加工などによって、より快適な姿勢に調整する必要があります。

エンジンと性能：信頼性と燃費の良さ

エンジンは、GN250やDR250Sをルーツとする空冷単気筒4サイクルSOHC4バルブエンジンを搭載しています。最高出力は20psと、250ccクラスとしては平凡な数値ですが、単気筒エンジンならではの太いトルクと扱いやすさが魅力です。振動も少なく、長時間の運転でも疲れにくい設計です。

燃費も非常に良く、街乗りでリッター25km以上、ツーリングでリッター35kmを超えることもありました。これは、同クラスのバイクの中でもトップクラスの燃費性能です。また、丈夫なエンジンとシンプルな車体構造により、整備性も高く、故障も少なく、業務用としても活用されていました。実際、一部の郵便局やバイク便などで使用されていました。

モデルバリエーションと価格

ボルティーには、Type I、Type II、Type C、Type Tなど複数のモデルが存在しました。Type Iが基本モデルで、様々なカラーバリエーションや装備が追加されたモデルが派生して販売されました。価格も、発売当初は29万8,000円と非常に低価格でしたが、排ガス規制の強化や装備の追加に伴い、徐々に値上がりしていきました。

後継車種とまとめ

ボルティーの後継車種はST250であり、こちらは現在もST250 Etypeとして販売されています。ボルティーは、その扱いやすさ、クラシカルなデザイン、そして実用性の高さから、多くのライダーに愛されたバイクでした。その魅力は、後継車種であるST250にも受け継がれています。

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