スズキ・ヴェルデ

スズキ・ヴェルデ：国産レトロスクーターの歴史に名を刻む一台

1998年から2005年にかけて、スズキが製造販売していたスクーター「ヴェルデ (Verde)」は、レトロなデザインと実用性を兼ね備えた一台として人気を博しました。イタリア語で「緑」を意味するVerdeの名は、発売当初のモデルに採用された緑色のイメージカラーに由来しています。ただし、初代モデルを除き、その後継モデルでは緑系の色は採用されていません。

デザインとネーミングの背景

ヴェルデのデザインは、往年のスクーターを思わせるレトロなテイストが特徴です。丸みを帯びたヘッドライト、プレス風のボディライン、そしてメッキパーツのアクセントが、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。 特に初期のロゴマークは、イタリアの老舗スクーターメーカー、ピアジオ社の「Vespa」と酷似していたことから、ピアジオ社からの抗議を受け、デザイン変更されたというエピソードも残っています。 「V」で始まる5文字というネーミングにも、Vespaへの意識が感じられます。

レトロスクーターブームとヴェルデの登場

ヴェルデが登場した背景には、1990年代に巻き起こったレトロデザインスクーターブームがありました。ホンダのジョルノやヤマハのビーノといった人気モデルの成功は、レトロデザインへの需要の高まりを明確に示していました。スズキは、1981年に発売した「ジェンマ」で既にレトロスクーター市場に参入していましたが、ヴェルデは、このブームに乗じて再び市場に挑んだモデルと言えるでしょう。

モデルバリエーションと進化

ヴェルデは、排ガス規制への対応や、ユーザーからの要望に応える改良を繰り返しながら、複数のモデルバリエーションが展開されました。主な変更点としては、メットインスペースの拡大、集中キーシステムの採用、カラーバリエーションの追加などが挙げられます。

エンジンと主要諸元

ヴェルデのエンジンは、スズキのレッツIIをベースにした空冷2ストローク単気筒エンジンです。コストを抑えるため、レッツIIと同様にウェイトローラーを3個とするなど、見えない部分にも工夫が凝らされています。サスペンションはフロントにボトムリンク式、リアにユニットスイング式を採用。ブレーキは前後ドラム式です。

主要モデルと特徴

UR50W（初代）: 1998年3月発売。2段階開閉シート、シャッターキー付きメインキーなどが特徴。メットインスペースは狭く、フルフェイスヘルメットは収納できません。
UR50Y（2代目）: 排ガス規制に対応。マフラーが変更され、シートカラーも変更されました。
UR50K1（3代目）: メットインスペースを大幅に拡大し、フルフェイスヘルメット収納が可能に。ガソリン・オイル給油口の位置も変更されました。
UR50K2（4代目）: センタースタンドロックと集中ロックシステムを採用。メットインもメインキーで開閉可能になりました。
* UR50K3（5代目）: スタンドグリップ形状の変更、マフラーカバーの大型化、シャッターキーの改良など、細部の改良が施されました。

各モデルでは、カラーバリエーションも豊富に展開され、ユーザーの好みに合わせた選択が可能でした。また、期間限定の「サマーバージョン」なども発売されました。

生産終了とその後

2005年に生産が終了したヴェルデですが、そのレトロなデザインと扱いやすさから、現在でも中古車市場で人気を保っています。国産レトロスクーターの先駆けとして、スズキの歴史に名を刻む一台と言えるでしょう。 多くのユーザーに愛されたヴェルデは、現代のスクーターにはない独特の魅力を放ち続けています。その魅力は、単なる乗り物ではなく、時代を反映したデザインと、当時の人々のライフスタイルの一端を垣間見せる存在として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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