スタッド・フランセ・パリ

フランスの首都パリを活動拠点とするプロラグビーユニオンクラブ、スタッド・フランセ・パリは、同国の最高峰リーグであるトップ14に所属しています。現在のクラブは、1995年5月にパリに存在した二つの総合スポーツクラブ、スタッド・フランセとCASG（Club athlétique des sports généraux）が統合して誕生しました。

概要

本拠地スタジアムはパリの第16区にあるスタッド・ジャン＝ブーアンです。クラブの特徴として特に知られているのは、その革新的なマーケティング戦略です。ラジオ局NRJの創始者の一人であるマックス・ガッジーニ氏がクラブ経営を主導した時期には、伝統的なラグビークラブの枠を超えた様々な試みが行われました。試合の前後にはコンサートや打ち上げ花火といった派手な演出が導入され、またケンゾーなどの有名ブランドを起用した洗練されたデザインのユニフォームを採用するなど、単なるスポーツイベントにとどまらないエンターテイメント性を追求しました。これは、個人主義的で移り気とも評されるパリのスポーツファンを惹きつける上で大きな成功を収めたと言われています。

中でも世界的に話題となったのが、2001年から毎年販売されているヌードカレンダー「Dieux du Stade（スタジアムの神々）」です。所属選手だけでなく、様々な競技の著名な招待選手（サッカーのジブリル・シセなども参加経験あり）のモノクロヌード写真を収録したこのカレンダーは、クラブショップだけでなくフランス全土のスーパーマーケットでも取り扱われるほどの人気を博しました。2004年以降は撮影風景を収めたDVDも発売されています。

しかし、こうした斬新なアプローチは常に好意的に受け止められたわけではありません。クラブの伝統を無視したエンブレムの変更や、しばしばゲイ・カルチャーを連想させるマーケティング手法に対しては、批判的な意見も少なくありませんでした。また、クラブは2016年10月に、ピンク色のパンサー（ヒョウ）をモチーフにしたマスコットキャラクター「Lucky（ラッキー）」を発表しています。

歴史

スタッド・フランセ・パリの歴史は、合併前の二つのクラブの歩みに遡ります。旧スタッド・フランセは1883年、パリのカルチエ・ラタン地区の学生たちによって、陸上競技などスタジアムで行われる様々なスポーツを網羅する総合スポーツクラブとして創設されました。クラブ名に「スタッド（スタジアム）」という言葉を冠しているのはその名残です。

創設間もない頃から、スタッド・フランセはフランスラグビー界で圧倒的な強さを誇りました。1892年に始まったフランス選手権（現在のトップ14の前身）では、1883年から1927年までの間に8回の優勝と7回の準優勝という輝かしい成績を収めています。しかし、1947年に初めて2部リーグへ降格して以降は徐々に勢いを失い、1990年代初頭には2部や3部リーグでの低迷を余儀なくされました。

一方、合併相手であるCASGは1903年に設立されたクラブです。フランスの大手銀行であるソシエテ・ジェネラルのスポーツチームが発展したもので、前述のスタッド・ジャン＝ブーアンを所有していました。

低迷していたスタッド・フランセに転機が訪れたのは1992年、マックス・ガッジーニ氏がクラブを買収したことでした。さらに1995年にはスタッド・ジャン＝ブーアンを所有するCASGも買収し、両クラブを合併させて現在のスタッド・フランセ・パリが誕生します。ガッジーニ氏は名将ベルナール・ラポルト氏を監督に招聘。チームは瞬く間に力をつけ、合併初年度に3部リーグで優勝して2部へ昇格。翌年には2部リーグで1位となり、わずか2年でトップリーグへの復帰を果たしました。そして、1部リーグに復帰した初年度の1998年には、決勝でペルピニャンを破り、見事優勝を飾るという劇的な復活劇を演じました。

タイトル

スタッド・フランセ・パリは、フランス国内および国際舞台で数多くのタイトルを獲得しています。

国内タイトル

フランス選手権（トップ14）:
優勝 14回（旧スタッド・フランセ時代の8回を含む）: 1893, 1894, 1895, 1897, 1898, 1901, 1903, 1908, 1998, 2000, 2003, 2004, 2007, 2015
準優勝 9回（旧スタッド・フランセ時代の7回を含む）: 1892, 1896, 1899, 1904, 1905, 1906, 1907, 1927, 2005
クープ・ドゥ・フランス:
優勝 1回: 1999
クープ・ドゥ・レスペランス:
準優勝 1回: 1916

国際タイトル

ハイネケンカップ:
* 準優勝 2回: 2001, 2005

著名な歴代所属選手

スタッド・フランセ・パリには、ラグビー界の歴史に名を刻む多くの名選手が在籍しました。サモア代表のレジェンドであるブライアン・リマ、アルゼンチン代表のゴンサロ・ケサダやパブロ・マテラ、イタリア代表のマウロ・ベルガマスコ、イングランド代表のジェームス・ハスケル、南アフリカ代表のモルネ・ステインやヴィンセント・コッホなど、各国の代表チームで活躍した選手が多数プレーしています。また、フランス代表選手も多く輩出しており、パスカル・パペ、マチュー・バスタロー、モルガン・パラなどが所属していました。日本人選手としては和田大輔氏もプレー経験があります。

スタッド・フランセ・パリは、その長い歴史の中で築き上げてきたラグビーにおける伝統と、革新的な経営・マーケティング戦略を融合させることで、現代ラグビー界においても特別な存在感を放っています。常に注目を集めるその動向は、今後のラグビーシーンにおいても重要な要素であり続けるでしょう。

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