カルチエ・ラタン

パリの学生街、カルチェ・ラタン：歴史と文化、そして教育の中心地

セーヌ川左岸に広がるカルチェ・ラタンは、パリ5区と6区にまたがる歴史的な地区です。その名は、かつてこの地でラテン語が学問や教会の共通語として広く用いられていたことに由来します。中世から近世にかけて、ヨーロッパ各地から集まった学生たちがラテン語で議論を交わしたことから、「ラテン語地区」という意味を持つカルチェ・ラタンと呼ばれるようになったのです。

教育機関の宝庫

カルチェ・ラタンの最大の特徴は、数多くの名門教育機関が集中している点です。パリ大学をはじめ、パリ第1大学、パリ第2大学、パリ第3大学、コレージュ・ド・フランスなど、フランスを代表する高等教育機関がここに集積しています。ジュシュー・キャンパスは、パリ第6大学とパリ地球物理研究所による複合研究施設として、最先端の研究活動が行われています。また、パリ第1大学、第2大学、第3大学、第4大学、第7大学の共同図書館であるサント・ジュヌヴィエーヴ図書館は、一般市民にも開放されており、貴重な文献資料を閲覧することができます。

さらに、カルチェ・ラタンにはグランゼコールと呼ばれる高等教育機関も複数存在しています。パリ高等師範学校、古文書学校、美術学校、パリ市立工業物理化学高等専門大学(EPCI)、応用美術研究所（LISAA）、パリ国立高等鉱業学校、パリ高等化学学校（Chimie ParisTech）、生活工業・環境科学研究所（AgroParisTech）、パリ高等電子工学研究所（ISEP）など、それぞれの分野で高い評価を得ている教育機関が、この地区に拠点を構えています。かつてはエコール・ポリテクニークやエセック経済商科大学院大学もカルチェ・ラタンにありましたが、現在は移転しています。

これらの大学やグランゼコールに加え、フェヌロン校、ルイ＝ルグラン校、アンリ4世校、サン＝ルイ校、ノートル・ダム・ド・シオン校など、歴史と伝統を誇る数多くのコレージュやリセもカルチェ・ラタンに存在しています。長い歴史の中で、多くの著名な人物を輩出してきたこれらの教育機関は、カルチェ・ラタンの知的で洗練された雰囲気を形作っています。

観光と文化の中心地

カルチェ・ラタンは教育機関だけでなく、観光名所も数多く存在します。パンテオン、サン・ミシェル広場、サンジェルマン大通りといった歴史的建造物や、リュクサンブール庭園といった美しい公園が、多くの観光客を魅了しています。これらの観光地は、学生たちの活気に満ちた日常と調和し、独特の雰囲気を醸し出しています。

五月革命と学生運動

1960年代、カルチェ・ラタンは五月革命の舞台となりました。反体制的な学生運動の中心地として、激しいデモや座り込みが行われ、フランス社会に大きな影響を与えました。この出来事は、カルチェ・ラタンの歴史に深く刻まれており、今もなお人々の記憶に鮮明に残っています。

日本のカルチェ・ラタン

カルチェ・ラタンの名は、フランス以外でも用いられています。日本では、大学が多く集まる東京都千代田区の駿河台周辺を「日本のカルチェ・ラタン」や「神田カルチェ・ラタン」と呼ぶことがあります。また、名古屋市昭和区の八事も、複数の大学キャンパスが集まることから「名古屋のカルチェ・ラタン」と呼ばれることがあります。宮崎吾朗監督のアニメ映画『コクリコ坂から』にも、主人公たちが通う学校に「カルチェラタン」と呼ばれる部室棟が登場し、この言葉の知名度をさらに高めました。

このように、カルチェ・ラタンは教育、文化、歴史が一体となった、パリを代表する魅力的な地区です。その活気と伝統は、これからも多くの学生や観光客を惹きつけ続けることでしょう。

もう一度検索