スチャート・サワッシー

スチャート・サワッシー（สุชาติ สวัสดิ์ศรี）は、1945年6月24日にタイのアユタヤで生まれました。彼は詩人、小説家、編集者として多岐にわたる分野で活躍し、タイ文学界において重要な人物とされています。

タマサート大学芸術学部歴史学科を卒業後、2年間私立学校で教師として教鞭を執りました。その後、教職を辞し、1969年から1976年まで『社会科学評論』誌の編集長を務め、その傍らで精力的に創作活動を行いました。彼の作品は、リアリズムとシュールレアリズムを融合させた独特のスタイルが特徴で、ルン・マイ（「新世代」）の先駆者として評価されています。

1976年10月にタイで発生した軍事クーデターの影響で、一時的に地下に潜伏せざるを得なくなりました。しかし、翌年には月刊文芸誌『作家界』の創刊を機に活動を再開し、その後も複数の雑誌で編集長を務めるなど、その活動は多岐にわたっています。現在でも詩を中心に幅広いジャンルで創作活動を続けており、タイの文学界に大きな影響を与え続けています。

スチャート・サワッシーは、新人作家の育成にも力を注いでおり、チョー・カーラケート賞を主宰しています。この賞は、現代タイ文学の振興に大きく貢献しており、若手作家の登竜門として重要な役割を果たしています。

私生活では、作家シーダーオルアンを妻に持ち、彼女の自由詩を見て執筆を勧めたというエピソードも知られています。シーダーオルアンの短編デビュー作は、スチャートが編集長を務めていた『社会科学評論』に掲載され、彼女の作品にはスチャートをモデルにした人物が登場することもあります。夫婦としても、互いに刺激し合い、文学活動を支え合う存在であることが伺えます。

彼の功績は数々の賞によっても証明されています。1991年にはアーユモンコン基金ジャーナリスト賞、1997年にはシーブーラパー賞を受賞しています。そして2011年には、タイ王国国家芸術家の称号を授与され、その文学的才能と功績が国を代表するものとして認められました。

主な作品

『日輪』(1967年)
『静寂を破る声－ナンタ嬢に捧げる』(1969年) ※詩集『静寂』(1972年)に収録
『人々』(1969年) ※詩集『静寂』(1972年)に収録
『あなた』(1970年) ※詩集『静寂』(1972年)に収録
『ある死刑囚の自白』(1972年) ※詩集『静寂』(1972年)に収録
『慶祝二百年、天使の都』(1982年) - バンコクの繁栄の陰に隠された貧富の格差や庶民の苦悩を描いた作品。
『その子は―原爆で障害を子をもった母に捧げる』(1983年) - 「アジア文学者ヒロシマ会議」出席のために来日した際に発表。
『ただ願うのは、』(1983年) - 「アジア文学者ヒロシマ会議」出席のために来日した際に発表。
『偉大なる核夢想婦人の絶頂観』(1983年) - 「アジア文学者ヒロシマ会議」出席のために来日した際に発表。

日本語訳

岩城雄次郎 編訳 「スチャート・サワッシー」『タイ現代詩選‐アジアの現代文芸[タイ]⑧』財団法人大同生命国際文化基金 1994年 (p.59-82)に上記の10篇が収録されています。

参考文献

* 宇戸優美子「解説 - 女性作家シーダーオルアンの歩みと軌跡」『シーダーオルアン短編集 一粒のガラス』大同生命国際文化基金〈アジアの現代文芸〉、2017年。

スチャート・サワッシーは、その卓越した文学的才能と、タイ文学界への貢献により、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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