ステファヌス3世 (ローマ教皇)

ローマ教皇ステファヌス3世：複雑な時代を生きた教皇

「ステファヌス3世」という称号を持つローマ教皇は、歴史的経緯から2人存在します。そのため、どのステファヌス3世について言及しているのかを明確にする必要があります。本記事では、現在、ローマ教皇庁および『教皇庁年鑑』が正式に認めている、768年に即位したステファヌス3世について解説します。もう一人の「ステファヌス3世」は、752年から757年まで在位した人物で、しばしばステファヌス2世と混同されます。

ステファヌス3世（720年 - 772年1月24日）は、94代ローマ教皇として768年8月7日から772年1月24日までその座にありました。彼の在位期間はわずか3年5か月と17日と短命に終わっています。

シチリアの司祭からローマ教皇へ

ステファヌス3世はシチリア島出身で、教皇に選出される以前は司祭として活動していました。彼の教皇就任は、決して平穏なものではありませんでした。先代のパウルス1世の治世は優柔不断なものであり、教皇庁内には多くの派閥が生まれ、対立が激化していました。結果として、コンスタンティヌス2世とフィリップスという2人の対立教皇が現れ、教皇の座を巡って争いが繰り広げられました。こうした混乱の中で、ステファヌス3世は768年8月7日、ようやく正式にローマ教皇に就任したのです。

ランゴバルド王国とフランク王国との間の狭間

教皇に就任したステファヌス3世は、すぐにランゴバルド王国の侵略という大きな問題に直面しました。この侵略はローマ教皇庁にとって大きな脅威であり、ステファヌス3世は強い圧力下に置かれました。そして、彼は苦渋の決断を下します。フランク王国との友好関係を断絶したのです。この決断の背景には、当時フランク王国を治めていたカール大帝の存在が大きく影響していると考えられます。ステファヌス3世は、ランゴバルド王国への対応を優先し、フランク王国との関係を犠牲にする道を選んだのでしょう。この判断が、彼の治世における大きな誤算だったか否かについては、歴史家の間でも議論が分かれています。

短い在位期間と歴史的評価

ステファヌス3世の教皇としての在位期間は非常に短かったと言えるでしょう。わずか3年と数ヶ月でその生涯を終えました。彼の在位期間は、ランゴバルド王国という強大な勢力との対立、そしてフランク王国との外交問題という困難に満ちていました。彼はこれらの問題にどのように対処すべきか、常に苦悩していたはずです。

ステファヌス3世の在位は短かったものの、彼の治世はローマ教皇の歴史において重要な位置を占めています。複雑な政治情勢の中、教皇としてどのような決断を下し、どのような苦悩を抱えていたのかを想像すると、彼の生涯はより深く理解できるでしょう。彼の治世は、後の歴史に大きな影響を与え、ローマ教皇の歴史を考える上で欠かせない一ページとなっています。教皇庁が正式に認めるステファヌス3世の生涯を理解することは、中世ヨーロッパの歴史を理解する上で重要な一歩となるでしょう。

もう一度検索