ステファン・グシェ

ステファン・グシェ（Ştefan Guşă, 1940年4月17日 - 1994年3月28日）は、ルーマニアの軍人であり、同国の歴史における重要な転換期である1989年のルーマニア革命において、参謀総長という要職を務めた人物です。

生涯と軍歴

グシェは、ルーマニア社会主義共和国のチャウシェスク政権下で、国軍における最重要ポストの一つである参謀総長を勤めました。彼のキャリアは、軍人としての卓越した能力と、政権からの信頼を背景に築き上げられたと考えられます。

ルーマニア革命における役割

1989年12月、ルーマニアで革命が発生すると、グシェの立場は大きく変化しました。当初、彼はチャウシェスク政権を支える立場にありましたが、革命の進展とともに、救国戦線側に加担する決断をします。ルポイ大尉がテレビで国軍の市民側への参加を呼びかけた後、グシェは自らもテレビ放送に登場し、国軍が市民への発砲を行わないよう呼びかけました。この行動は、革命の進行において重要な転換点となり、国軍が市民を弾圧するのではなく、保護する立場へと変化する上で大きな役割を果たしました。

しかし、革命期間中、グシェに対する疑念も生じました。救国戦線側は、彼が秘密裏に暗号を使ってチャウシェスク派を指揮しているのではないかという疑いを抱き、その結果、彼は参謀総長の職を解任されることになりました。この解任は、革命後のルーマニアにおける権力闘争と、不確実な情勢を反映する出来事と言えるでしょう。

死去

グシェは、1994年3月28日にブカレストの軍病院で癌のため死去しました。彼の死は、ルーマニア革命の激動期を生き抜いた一人の軍人の終焉として、人々に記憶されることとなりました。

評価

ステファン・グシェの評価は、ルーマニア革命における複雑な役割と、その後の政治的混乱の中で様々な側面から議論されてきました。当初はチャウシェスク政権の忠実な支持者であったにもかかわらず、革命時には市民側へと転じた彼の行動は、評価が分かれるところです。救国戦線側からは疑念を持たれたものの、国軍の市民への発砲を抑制した事実は、彼が革命の混乱を収束させる上で重要な役割を果たしたことを示唆しています。

参考文献

ダン・チョバヌ、智片通博『この目で見た政権の崩壊―ルーマニア「革命」の7日間―』日本放送出版協会、1990年

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