ステートレス・プロトコル

ステートレスプロトコルとは

ステートレスプロトコルは、通信を独立した要求（リクエスト）と応答（レスポンス）の組み合わせとして扱う通信プロトコルです。各リクエストは、過去のリクエストとは無関係な独立したトランザクションとして処理されます。つまり、サーバーはクライアントとの通信において、セッション情報や状態を保持する必要がありません。

ステートレスプロトコルの特徴

サーバーの単純化: セッション情報を保持する必要がないため、サーバー側の設計が簡素化され、リソース管理が容易になります。
スケーラビリティ: 各リクエストが独立しているため、サーバーの負荷分散が容易で、システムの拡張性に優れています。
耐障害性: クライアントセッションが異常終了した場合でも、サーバーの状態をクリアする必要がないため、システム全体の安定性が向上します。
軽量性: サーバーは状態を保持する必要がないため、CPU、メモリ、スレッドなどのリソース消費を最小限に抑えることができます。
予測可能性: 各リクエストが独立しているため、処理結果が予測しやすく、システムの挙動を理解しやすいです。

ステートレスプロトコルの例

インターネットの基盤であるIP（Internet Protocol）や、Webのデータ通信の基盤であるHTTP（Hypertext Transfer Protocol）が、代表的なステートレスプロトコルです。HTTPでは、各リクエストメッセージが独立して解釈され、過去のやり取りに依存することはありません。

ステートフルプロトコルとの比較

ステートレスプロトコルとは対照的に、サーバーがセッション情報を保持する必要があるプロトコルをステートフルプロトコルと呼びます。例えば、従来のFTP（File Transfer Protocol）はステートフルプロトコルの一例です。FTPでは、ユーザーは認証され、ワーキングディレクトリや転送モードなどの設定がセッション中に保持されます。これにより、ユーザーとの対話的なセッションが可能になります。

ステートレスプロトコルの利点と欠点

利点:

サーバーの設計が単純になる
スケーラビリティが高まる
リソース消費を抑えられる

欠点:

リクエストに必要なすべての情報を毎回含める必要がある
その余分な情報がサーバーで解釈される必要がある

プロトコルレイヤのスタッキング

異なるプロトコルレイヤ間では、ステートフルプロトコルとステートレスプロトコルを組み合わせて使用できます。例えば、HTTPはステートレスですが、ステートフルなTCP（Transmission Control Protocol）の上で使用されます。TCPはさらにステートレスなIPの上で使用されています。また、IPの上では、ネットワーク上のIPパケットのルーティングのためにステートフルなBGP（Border Gateway Protocol）が使用されています。

HTTPにおけるセッション管理

HTTPはステートレスであるため、セッション層の機能は本来ありません。しかし、Webアプリケーションでは、ユーザーのログイン状態やカート情報などを保持する必要があります。このため、HTTPの上でステートフルなプロトコルを構築する様々なセッション管理手法が用いられます。一般的には、クッキーやパラメータによるユニークな識別子を利用し、サーバーが同じクライアントからのリクエストを追跡できるようにします。

まとめ

ステートレスプロトコルは、インターネットやWebアプリケーションにおいて重要な役割を果たしています。そのシンプルさ、スケーラビリティ、耐障害性は、現代の分散システムを構築する上で不可欠な要素となっています。しかし、ステートレスであることの制約から、セッション管理などの課題に対処する必要があることも理解しておく必要があります。

出典
この記事は2008年11月1日以前にFree On-line Dictionary of Computingから取得した項目の資料を元に、GFDL バージョン1.3以降の「RELICENSING」(再ライセンス) 条件に基づいて組み込まれています。

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