ステート・フェア (1962年の映画)

1962年に公開されたミュージカル映画『ステート・フェア』（英: State Fair）は、ホセ・フェラーが監督を務めたアメリカ合衆国の作品です。この映画は、同名のタイトルで過去に制作された1933年版および1945年版に続く、三度目のリメイクとして発表されました。オリジナルの物語はフィル・スタングの小説に基づき、家族が年に一度の州の品評会を訪れる様子を描いたものです。

先行する二つの映画版、特にミュージカル映画の傑作と評されることも多い1945年版は、ロジャース&ハマースタインによる楽曲と共に大きな成功を収めていました。しかし、この1962年版は、そうした過去の栄光を引き継ぐことはできませんでした。公開された当時、本作は興行的な成功を収めることができず、批評家からも概して厳しい評価を受け、結果として商業的にも批評的にも失敗作とみなされることになります。

本作には、当時のエンターテイメント界で人気を博していた俳優や歌手が多数出演しています。家族の中心人物であるウェイン・フレイク役には、人気歌手のパット・ブーン。彼の恋の相手となるジャーナリスト、ジェリー・ダンディーには、同じく歌手として知られるボビー・ダーリンが配されました。フレイク家の娘、マージー役をパメラ・ティフィンが演じ、彼女と交流するショーダンサーのエミリー・ポーター役には、この頃注目を集め始めていたアン＝マーグレットが起用されています。両親であるエイベルとメリッサには、ベテラン俳優のトム・イーウェルとアリス・フェイが扮し、作品に重厚感を与えています。その他、ヒップルウエイト役のウォリー・コックスなど、多彩なキャストが脇を固めています。

音楽面では、リチャード・ロジャースが中心的な役割を担いました。過去の成功作で彼とタッグを組んでいた作詞家のオスカー・ハマースタイン2世は、1960年に他界していたため、本作の制作には参加していません。そのため、ロジャースは既存の楽曲に加え、本作のために「Never Say No to a Man」「Willing and Eager」「This Isn't Heaven」「The Little Things In Texas」「More Than Just a Friend」といった複数の新曲を作詞・作曲しました。これらの楽曲は、ロジャースが単独で手掛けた貴重な例であり、過去作からの名曲「Our State Fair」「It Might as Well Be Spring」「That's for Me」「It's a Grand Night For Singing」「Isn't It Kind of Fun?」などと共に、映画のミュージカルシーンを構成しています。

舞台設定にも変更が加えられました。これまでの映画版がアイオワ州のステート・フェアを舞台としていたのに対し、1962年版ではテキサス州ダラスにあるフェア・パークで開催されるテキサス州ステート・フェアが物語の舞台となりました。これは、広大な敷地を持つフェア・パークのロケーションを活かし、作品に新たな視覚的魅力を加えようとする試みだったのかもしれません。

映画は実際のフェア・パークで撮影が行われ、当時の活気ある様子が映像に収められています。劇中に登場するアトラクションの一つであるティルト＝ア・ワールは、現在コロラド州のテーマパークに移設されたとされています。また、フェア・パーク内に当時存在したモノレール「トレイルブレイザー」（現在は廃線）も映像に記録されており、時代の雰囲気を伝える貴重な資料ともなっています。

総じて、1962年版『ステート・フェア』は、過去の成功作のリメイクとして期待されつつも、興行的・批評的には苦戦した作品です。しかし、当時の人気俳優たちが集結し、リチャード・ロジャースが単独で手掛けた楽曲群、そしてテキサス州ステート・フェアという新たな舞台設定など、本作独自の魅力も存在します。先行する映画版や原作小説と見比べることで、本作の持つ特徴や、リメイクという形式の難しさをより深く理解することができるでしょう。

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