ストップ (オルガン)

オルガンのストップ（音栓）とは

オルガンにおけるストップとは、音色を選択するための機構であり、操作することで様々な音色や音高のパイプ列を選択し、演奏に多彩な表現を加えることができます。ストップは、選択機構だけでなく、選択される音色やパイプ列そのものを指すこともあります。

ストップの基本原理

通常、オルガンの風箱からパイプへの空気の流入は、スライダーによって遮断されています。ストップを操作することでスライダーが動き、パイプと空気の経路が接続され、パイプ列が発音可能になります。

複数のストップを同時に作動させることで、音色を合成し、単独のストップでは得られない豊かな音色を作り出すことができます。特に、異なるピッチのパイプを同時に鳴らすことで、倍音構造を合成することが重要です。また、ストップの違いによって、音色の変化だけでなく、鍵盤に対する発音高を変え、限られた鍵盤数で広い音域を演奏することも可能です。

ストップの呼称

ストップは、英語で「organ stop」、ドイツ語で「Register」、イタリア語で「registro」、フランス語で「jeu d'orgue」と呼ばれます。日本では、風路に栓をして送風を止めることから「音栓」とも訳されます。

ストップの操作部

ストップの操作部には、様々な種類があります。

ドロー・ノブ形: 伝統的な引き出し式のノブで、パイプオルガンで最も一般的です。ノブを引き出すと音が鳴り、押し込むと止まります。
レバー形: 棒を上下または左右に動かすことで、音のオン・オフを切り替えます。
タブレット形: タブレットの上部と下部を押すことで、音のオン・オフを切り替えます。
タンブラー（舌）形: 舌状のスイッチを上下に動かすことで、音のオン・オフを切り替えます。
点灯押しボタン形: ボタンを押すたびに、音のオン・オフが切り替わります。

コンビネーション（音栓操作記憶装置）

コンビネーションは、ストップの組み合わせを記憶し、簡単に呼び出すことができる装置です。主な種類として、以下のものがあります。

フリー・コンビネーション: 各ストップの横に記憶スイッチが配置され、演奏中に簡単に変更できます。
ゼッツアー・コンビネーション: 予めストップを選択し、記憶セットスイッチと記憶番号スイッチを同時に押して記憶させます。演奏中の記憶変更はできません。
フェステ・コンビネーション: 予め選択されたストップが記憶されており、変更はできません。

近代の演奏台では、手元ボタンや足ピストンによって、コンビネーションを操作することが可能です。

パイプの種類

オルガンのパイプには、主にフルー管とリード管の2種類があります。

フルー管: エアリードによって発音する管で、リコーダーと同じ原理です。パイプの末端が開いているか閉じているかによって、開管と閉管に分けられます。
リード管: リードによって発音する管で、クラリネットやサクソフォーンと同じ原理です。真鍮製のリードが振動して発音します。
* ダイヤホーン: 革を貼った弁が振動源となる特殊な管で、低音用に使用されます。

パイプの材質には、金属（主に鉛と錫の合金）、木、竹などが用いられます。

フィート律表記と音高

オルガンのストップ名には、フィート律による基準音高が表記されています。8'のストップは、鍵盤どおりの音高で発音されます。16'は8'の1オクターブ下、4'は8'の1オクターブ上の音高で発音されます。

オクターブ間隔以外の音程のストップは、ミューテーション・ストップと呼ばれます。5度音程系のものが最も一般的です。

複合ストップ

ピッチの異なる複数列のパイプを束ねたもので、複数のストップを同時に加えたのと同様の効果が得られます。Mixture、Sesquialtera、Cornetなどがあります。

ディヴィジョンと鍵盤

大規模なオルガンでは、パイプ群はディヴィジョンと呼ばれる独立した小オルガンに組織されます。各ディヴィジョンごとに鍵盤が設けられ、音色や音量の対比が可能です。主なディヴィジョンとして、主オルガン、ポジティフ、スウェル、ペダルがあります。

カプラー

カプラーは、オルガンの各ディヴィジョンを結合する機構で、あるディヴィジョンのストップを他のディヴィジョンの鍵盤から使用することができます。

震音装置

音を震わせるビブラートの効果を発生させる装置です。トレムラント（送風の変動）と唸音ストップ（調律を違えたパイプを同時に鳴らす）があります。

ストップ名

ストップ名は、地域や時代、製作家によって異なる場合があります。オルガンの仕様書には、全ストップをまとめた一覧表が記載されています。

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