ストラスアイラ蒸留所

ストラスアイラ蒸留所：シーバスリーガルの故郷、スペイサイド最古の蒸留所

ストラスアイラ蒸留所は、スコットランドのスペイサイド地方に位置する、スコッチウイスキーの蒸留所です。特に、ブレンデッドウイスキー「シーバスリーガル」の重要な構成原酒（キーモルト）を供給していることで知られています。製造される原酒の大部分がシーバスリーガルに使用されるという、密接な関係にあります。

スペイサイドに現存する蒸留所としては最古であり、その美しい景観から観光地としても人気を集めています。伝統的なスコッチウイスキーの蒸留所の姿を今に残しており、多くのウイスキーファンを魅了し続けています。

歴史

1786年、キースの地元の実業家、ジョージ・テイラーとアレグザンダー・ミルンによって設立されました。当時、キースでは主要産業だったリネン業が衰退しており、新たな事業として蒸留所が立ち上げられた背景があります。1786年創業は、スコットランドで正式な酒造免許を取得した蒸留所としては最古であり、ギネス世界記録にも認定されています。

設立当初は「ミルタウン（Milltown）」という名前でしたが、蒸留所のそばを流れるアイラ川にちなみ、地元では「ストラスアイラ（Strathisla）」と呼ばれていました。1870年には正式に「ストラスアイラ」に改名されています。

創業後、所有者は何度か変わりました。1823年にマクドナルド・イングラム社、1830年にはウィリアム・ロングモアの手に渡ります。ロングモアの所有下では、大規模な火災が二度発生し、操業に大きな影響が出ましたが、ロングモアは亡くなるまで蒸留所を所有し続けました。その後、ロングモアの義理の息子であるジョン・ゲデス＝ブラウンが経営を引き継ぎ、1890年には「ミルトン蒸留所」に改名されました。ストラスアイラの象徴的な双塔のパゴダは、この時期にチャールズ・ドイグによって作られました。

1940年代には、ジェイ・ポメロイが大株主となりますが、経営はうまくいかず、1949年に会社は倒産。1950年、シーグラム社傘下のシーバス・ブラザーズ社によって買収され、翌年から「ストラスアイラ」の名で蒸留が再開されました。この買収は、シーバスリーガルにとってモルト原酒の安定供給を確保する上で、重要な出来事でした。2001年にシーグラム社がウイスキー産業から撤退したことに伴い、ストラスアイラはシーバス・ブラザーズと共に、フランスの酒造メーカー、ペルノ・リカールの傘下に入りました。

製造

マッシュタン（糖化槽）は銅の蓋がついたステンレス製で、1基が使用されています。1回の糖化には6時間かかり、ノンピート麦芽5.12トンが消費され、54時間の発酵を経て23800リットルの麦汁が作られます。ウォッシュバック（発酵槽）はオレゴンパイン製7基とカラマツ製3基の計10基で、評論家のマイケル・ジャクソンは、この木製のウォッシュバックがストラスアイラの個性に重要な影響を与えていると評価しています。

仕込み水にはブルームヒルの泉から湧く軟水を主に使用し、一部ブイエンの泉（ゲール語で「泡立つ泉」の意味）の水も使用しています。ブイエンの泉はカルシウムを含む中硬水で、13世紀にはドミニコ会の修道士たちがビール醸造に利用していました。

ポットスチルは、ランタンヘッド型の初留器が2基、ボール型の再留器が2基の計4基です。加熱方式はすべて蒸気式。蒸留棟は狭く、蒸留器も小型であるため、やや重めの原酒が出来上がります。富士御殿場蒸溜所のポットスチルは、ストラスアイラのスチルをモデルに作られています。

生産されたニューポットは加水され、大部分はタンクローリーでキース郊外のシーバス社の集中熟成庫に運ばれて樽詰めされます。蒸留所内にも熟成庫があり、少量であれば敷地内での熟成も可能です。

製品

ストラスアイラは、シーバスリーガルにとって非常に重要なキーモルトであり、生産された原酒の大部分がシーバスリーガルに使用されます。

かつては「ストラスアイラ12年」がシングルモルトのオフィシャルボトルとして販売されていましたが、2019年に終売となりました。しかし、インディペンデント・ボトラーのゴードン&マクファイルとの関係が深く、同社のリリースは比較的入手しやすい状況です。

使用されているブレンデッドウイスキー

シーバスリーガル
ロイヤルサルート

評価

評論家のマイケル・ジャクソンは、ストラスアイラのハウススタイルを「ドライ、フルーティ。食後酒。」と評しています。また、熟成の足りない原酒は固さを感じさせるものの、良質な樽で十分に熟成した原酒は花とあっさりしたフルーツのアロマを感じられると評しています。土屋守は、「華やかでコクがあり、熟したリンゴのような香りがするすぐれた食後酒」と評価しています。

観光地として

伝統的なスコッチウイスキーの蒸留所らしい外観から、「絵葉書のように美しい蒸留所」「スコットランドでもっとも美しい蒸留所」などと評されています。ガイドなしの見学ができる最初の蒸留所であり、シーバスリーガルのブランド体験ツアーも実施しています。スコットランド観光庁公認の5つ星を獲得しており、団体旅行のコースに組み込まれるなど、観光地としても高い人気を誇ります。

もう一度検索