ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団

ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団（フランス語: l'Orchestre philharmonique de Strasbourg）は、フランス東部、アルザス地方の中心都市ストラスブールに本拠地を置く、フランスの国立オーケストラです。その歴史は古く、1855年にストラスブール市立劇場の専属オーケストラとして誕生しました。設立当初はストラスブール市立管弦楽団として知られていましたが、1972年に現在の名称であるストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団へと改称。さらに、1992年にはフランス文化省によって国立オーケストラに認定され、フランスを代表するオーケストラとしての地位を確立しました。

このオーケストラの活動範囲は幅広く、年間を通じてストラスブールの主要な会場で定期演奏会シリーズを開催しています。また、演奏活動のもう一つの重要な柱として、アルザス地方の主要三都市（ストラスブール、ミュルーズ、コルマール）が共同で運営するラン国立オペラカンパニーの公演におけるオーケストラピットでの演奏を一手に引き受けています。コンサートとオペラという異なる分野での活動を通じて、地域におけるクラシック音楽や舞台芸術の振興に大きく貢献しています。

オーケストラには世界中から優秀な演奏家が集まっており、そのメンバー構成は国際色豊かです。特筆すべき点として、オーケストラの顔ともいえるコンサートマスター（首席奏者、フランス語ではPremier Violon Solo）の一人として、日本人ヴァイオリニストの本田早美花氏が名を連ねています。彼女は楽団のサウンドをリードする重要な役割を担っています。

ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団の長い歴史は、多くの著名な指揮者たちによって紡がれてきました。設立当初のヨゼフ・ハッセルマン（1855-1871年）に始まり、フランツ・シュトックハウゼン（1871-1907年）が長期間にわたり楽団を率いました。20世紀には、後に指揮界の巨匠となるオットー・クレンペラーが1915年から1918年にかけて指揮台に立ち、またハンス・プフィッツナーも二度にわたって（1907-1915年、1918-1919年）首席指揮者を務めました。その後もガイ・ロパルツ（1919-1929年）、ポール・パレー（1929-1940年）、ハンス・ロスバウト（1940-1945年）、ポール・バスティド（1945-1950年）、エルネスト・ブール（1950-1964年）、アルチェオ・ガリエラ（1964-1971年）といった個性豊かな指揮者たちが楽団の芸術性を磨きました。名称変更後の現代においても、アラン・ロンバール（1972-1983年）、テオドール・グシュルバウアー（1983-1997年）、ジャン・レイサム＝ケーニック（1997-2003年）といった指揮者が楽団を率いました。近年ではマルク・アルブレヒト（2008-2011年）、マルコ・レトーニャ（2012-2021年）が首席指揮者を務め、2021年からはアジス・ショハキモフが新たな音楽監督として楽団の未来を築いています。

録音活動も積極的に行っており、その成果は多くのディスクとして残されています。特に、アラン・ロンバール指揮によるジャック・オッフェンバックのオペラ『ペリコール』の全曲録音や、テオドール・グシュルバウアー指揮によるアントン・ブルックナーの交響曲第7番の録音などが、楽団の代表的な業績としてよく知られています。これらの録音は、ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団の豊かな伝統と高い演奏能力を示すものとして評価されています。

設立から160年以上の歴史を持つストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団は、多くの困難な時代を乗り越え、常に進化を続けてきました。地域に根差した活動と国際的な視野を兼ね備えた、フランス国内でも特に重要な位置を占めるオーケストラの一つです。

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