ストレンジャー (ビリー・ジョエルのアルバム)

ビリー・ジョエルの傑作『ストレンジャー』

『ストレンジャー』（The Stranger）は、アメリカのシンガーソングライター、ビリー・ジョエルが1977年に発表したスタジオアルバムです。このアルバムは、彼のキャリアにおける大きな転換点となり、商業的にも批評的にも大成功を収めました。

アルバム概要

過去4作でも一定の成功を収めていたジョエルでしたが、『ストレンジャー』は全米アルバムチャートで最高2位を記録し、彼の名声を不動のものとしました。この成功の背景には、ジョエルとプロデューサーのフィル・ラモーンとの実りある共同作業がありました。ラモーンは、ジョエルの楽曲を革新的な手法で補佐し、その後の10年間にわたる二人の協力関係の礎を築きました。

アルバムからは、「素顔のままで」（Just the Way You Are）がグラミー賞最優秀レコード賞を受賞したほか、「シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン」（She's Always a Woman）、「若死にするのは善人だけ」（Only the Good Die Young）、「ムーヴィン・アウト」（Movin' Out (Anthony's Song)）など、数々のヒットシングルが生まれました。特に「ムーヴィン・アウト」は、後にブロードウェイミュージカルの題材にもなっています。

『ストレンジャー』は、ジョエル自身最大のセールスを記録し、1000万枚を売り上げました。これは、当時コロンビア・レコードで最も売れたアルバムであったサイモン＆ガーファンクルの『明日に架ける橋』を凌駕する記録でした。

2003年には、ローリング・ストーン誌が選ぶ「最も偉大な500のアルバム」において、67位にランクインし、その音楽史における重要性が改めて評価されました。

記念盤

2008年7月7日には、アルバム発売30周年を記念して「THE STRANGER (2 CD Legacy Edition)」がDVD付きで発売されました。この2枚組CDには、フィル・ラモーンによってリマスタリングされたオリジナルスタジオ録音版と、1977年のカーネギーホールでのライブからの未発表音源が収録されました。付属のDVDには、アルバムのプロモーション用に収録されたライブ風ビデオクリップや、BBCの番組「Old Grey Whistle Test」に出演した際の貴重な映像が収録されました。

さらに、2018年12月26日には、アルバム発売40周年記念として「ストレンジャー 40周年記念デラックス・エディション」が発売されました。この記念盤では、DVDは排されましたが、1枚目がSACDハイブリッド仕様となり、SACD層にはテッド・ジェンセンのリマスターによる2000年DSDマスタリングとフィル・ラモーンのプロデュースによる5.1chサラウンド、CD層にはテッド・ジェンセンによる2011年デジタルリマスターと日本初CD化となるナッソーコロシアムでのライブ音源5曲が収録されました。2枚目はBlu-Spec CD2仕様となり、特典として1978年初来日公演チケット、パンフレット、アルバムからカットされた3枚のアナログシングルジャケット、オリジナルLP帯などが復刻収録されました。

ジャケット

アルバムのジャケット裏面には、ビリー・ジョエルをはじめとするバンドメンバーとプロデューサーのフィル・ラモーンが、マンハッタンのイタリアンレストラン「Guido's Restaurant」で食事をしている写真が使用されました。このレストランは、「Supreme Macaroni pasta store」の店内奥にありましたが、現在は建物が取り壊されています。また、このレストランは映画「レオン」の撮影にも使用されました。

収録曲

全曲ビリー・ジョエルによる作詞作曲です。

1. ムーヴィン・アウト (Movin' Out (Anthony's Song)) - 3分30秒
2. ストレンジャー (The Stranger) - 5分10秒
3. 素顔のままで (Just the Way You Are) - 4分52秒
4. イタリアン・レストランで (Scenes from an Italian Restaurant) - 7分37秒
5. ウィーン (Vienna) - 3分34秒
6. 若死にするのは善人だけ (Only the Good Die Young) - 3分55秒
7. シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン (She's Always a Woman) - 3分21秒
8. 最初が肝心 (Get It Right the First Time) - 3分57秒
9. エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム (Everybody Has a Dream) - 6分38秒

参加ミュージシャン

ビリー・ジョエル - アコースティックピアノ、ボーカル、キーボード、シンセサイザー
ダグ・ステッグマイヤー - ベース
リバティ・デヴィート - ドラムス
リッチー・カナータ - テナー/ソプラノサックス、クラリネット、フルート、オルガン
スティーヴ・カーン - 6弦/12弦ギター、アコースティックリズムギター、高音ギター
ハイラム・ブロック - エレクトリックギター
パトリック・ウィリアムズ - オーケストレーション
ラルフ・マクドナルド - パーカッション（「ストレンジャー」「素顔のままで」「最初が肝心」「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
ヒュー・マクラッケン - アコースティックギター（「素顔のままで」「イタリアン・レストランで」「シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン」「最初が肝心」「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
スティーヴ・バーグ - アコースティックギター（「素顔のままで」「シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン」）、エレクトリックギター（「イタリアン・レストランで」）
フィル・ウッズ - アルトサックス（「素顔のままで」）
ドミニク・コルテス - アコーディオン （「イタリアン・レストランで」「ウィーン」）
リチャード・ティー - オルガン（「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
フィービ・スノウ - コーラス（「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
ラニ・グローヴス - コーラス（「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
グウェン・ガスリー - コーラス（「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」）
* パティ・オースティン - コーラス（「エヴリバディ・ハズ・ア・ドリーム」)



『ストレンジャー』は、ビリー・ジョエルの音楽的才能が結実した作品であり、時代を超えて多くの人々を魅了し続けています。その革新的なサウンドと心に響くメロディーは、今もなお色褪せることなく、多くの音楽ファンに愛されています。

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