ストレンジャーソレント

日本の漫画界において、新たな才能の発掘と育成は常に重要な課題とされています。そうした背景の中、小池書院より一冊の青年向け漫画雑誌が産声をあげました。それが『ストレンジャーソレント』です。2013年9月2日に創刊され、毎奇数月の1日に発売されていました。この雑誌の最大の特徴は、漫画原作者として著名な小池一夫氏が編集長を務め、特に若手クリエイターの才能を育む土壌となることを目指していた点にあります。

誌面を彩ったのは、叶精作氏や神江里見氏、木村知夫氏といった経験豊かな大家から、多くのフレッシュな感性を持つ新人作家まで、多様な顔ぶれでした。ベテラン作家陣がその技量を示す一方で、多数を占める新人作家たちは、斬新なアイデアや独自のスタイルで読者に新鮮な驚きを提供しました。まさに、新旧の実力派が交錯する、刺激的な場となっていたと言えるでしょう。

『ストレンジャーソレント』には、バラエティ豊かなジャンルの漫画作品が掲載されていました。最終号まで連載が続いた作品には、現代社会を舞台にしたファンタジー色の強い物語や、歴史もの、アクション、コメディなど、多岐にわたります。例えば、逢上央士氏原作、鈴木ネコ氏作画の「オレを二つ名で呼ばないで！」や、水喜結太加氏の「また夜見上君が倒れてる」、河合ヨシアキ氏の「霊媒分析官レアード」といった作品が、創刊初期から読者に親しまれました。また、鳴二一巴氏原作、神江里見氏作画による「爆誕ツバメ」や、果南ビレン氏の「迦陵頻伽」なども、読者の関心を引きました。後期には、宗田英李氏原作、叶精作氏作画の「狸山のカイ」のような、ベテラン作家と若手原作者の組み合わせによる意欲的な作品も登場しました。

連載終了となった作品群も、雑誌の歴史を語る上で欠かせません。天野喜孝氏が絵師、小池一夫氏が語り部を務めた「帰れソレントへ ―『ZAN』より―」や、竹内清訓氏原作、叶精作氏作画の「TAKE -5- FIVE ゴウ」など、著名クリエイターによる話題作も掲載されました。大島永遠氏のような人気漫画家が読切で登場するなど、サプライズもありました。これらの作品は、読者に多様な選択肢を提供し、『ストレンジャーソレント』の多面性を形作っていました。

漫画作品だけでなく、読み物記事も充実していました。創刊号から連載された高橋留美子氏へのインタビュー「高橋留美子のキャラクターBOX！」は、人気漫画家の創作の秘密に迫る貴重な企画でした。「キャラクター・ワールド・レポート！」では、小池一夫氏が参加したサンディエゴ・コミコンのレポートや、マンガ・アニメ・ゲーム界の著名人との対談が掲載され、業界の最新情報や深い洞察を提供しました。さらに、2014年12月号からは、Pr. サイキック氏による漫画批評「プロフェッサー・サイキックの漫画会を斬る!!」が始まり、特定の作品を深く掘り下げて解説・批評することで、読者の作品理解を深める一助となりました。これらの読み物は、単なる漫画雑誌という枠を超え、エンターテインメント業界全体を俯瞰する視点を与えていました。

『ストレンジャーソレント』は、小池一夫氏がかつて主宰した伝説的な漫画家育成塾「劇画村塾」の精神を受け継ぐかのように、新人育成という明確な目的を持っていました。多くの若手作家にプロの漫画家としての道を切り開く機会を提供し、その中から将来の漫画界を担う才能が輩出されることが期待されていました。短命に終わった雑誌ではありましたが、その存在は、漫画界における新たな才能の登竜門としての役割を果たそうとした試みとして記憶されるでしょう。

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