ストロンチウム90 (バンド)

ストロンチウム90（Strontium 90）

概要

ストロンチウム90は、1977年のごく短い期間だけ活動したイギリスの音楽プロジェクト、あるいはバンドです。このグループには、プログレッシブ・ロック・バンド、ゴングを脱退したマイク・ハウレット（リードベース、ボーカル）を中心に、後に世界的な人気を博すバンド、ザ・ポリスを結成するメンバーであるスティング（ベース、ボーカル）、スチュワート・コープランド（ドラム）、アンディ・サマーズ（ギター）が集結しました。彼らの活動は短命に終わりましたが、ザ・ポリスの核となるトリオが出会う場となったという点で、音楽史において特筆される存在です。

結成の経緯

バンド結成のきっかけは、1976年にゴングでのキャリアを終えたマイク・ハウレットが、新たな音楽的探求のためにデモ音源制作を進める中で、ボーカリストとして当時ロンドンに拠点を移していたスティング（当時はジャズ・ロック・バンド、ラスト・イグジットで活動）に協力を求めたことでした。翌1977年1月、詩人レディ・ジューン主催のパーティーで偶然出会ったギタリストのアンディ・サマーズがプロジェクトに加わります。ドラムについては当初、ヘンリー・カウのクリス・カトラーが参加する予定でしたが、都合により実現しなかったため、スティングが自身の友人であり、当時キャリアを模索していたスチュワート・コープランドを推薦し、参加が決定しました。こうして、マイク・ハウレットを中心に、後にザ・ポリスとして成功する三人のメンバーが顔を揃えることになったのです。

活動と終焉

メンバーが集まったストロンチウム90は、早速活動を開始します。1977年2月には、ヴァーチャル・アース・スタジオで複数のデモトラックを録音しました。この音源は、彼らの唯一の公式リリースとなるアルバムに収録されることになります。そして、同年5月28日には、パリで開催されたゴングの再結成コンサートに「ストロンチウム90」名義で出演し、演奏を披露しました。さらに、1977年7月には「The Elevators」と名を変えてロンドンのクラブでパフォーマンスを行うなど、限定的ではありますがライブ活動も行いました。

しかしながら、同時期にスティングとスチュワート・コープランドは、アンディ・サマーズとは別に、ポリスとしての活動を本格化させていました。クラブでの演奏後、ポリスでの活動を優先することにしたスティングとコープランドはストロンチウム90を脱退。それに続いてアンディ・サマーズもバンドを離れたため、結成からわずか半年ほどでストロンチウム90は自然消滅という形で幕を閉じました。

ポリス結成への影響

ストロンチウム90の活動期間は極めて短かったものの、このバンドが音楽史において特筆される理由は、マイク・ハウレットのプロジェクトを通じて、スティング、スチュワート・コープランド、アンディ・サマーズという、後にモンスターバンド、ザ・ポリスの核となるトリオが出会ったことにあります。特に、当時まだ一緒に演奏したことのなかったスティング、コープランド、サマーズの三人が、このバンドでのリハーサルや演奏を通じて互いの音楽性を確認し合ったことは、その後のザ・ポリス結成および彼らのサウンド確立において極めて重要な意味を持ちました。彼らはこのバンドでの経験を礎に、やがて絶大な成功を手にすることになるのです。

ディスコグラフィ

ストロンチウム90名義での公式リリースは、解散から長い年月を経た1997年に発表されたアルバム『ポリス・アカデミー（Police Academy）』のみです。このアルバムには、1977年2月にヴァーチャル・アース・スタジオで録音されたセッション音源や、同年5月28日のパリでのライブ音源が収録されています。このアルバムは、スティングが設立したPANGÆA RECORDSからリリースされました。バンドの短いながらも重要な歴史を記録した貴重な音源となっています。

メンバー

マイク・ハウレット - リードベース、ボーカル
スティング - ベース、ボーカル
スチュワート・コープランド - ドラム
アンディ・サマーズ - ギター

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