ストーム (学生生活)

ストームとは

ストームは、日本の旧制高等学校、大学予科、旧制専門学校、新制大学などの学生寮において、学生が行った一種の蛮行を指します。バンカラ文化の一形態であり、その語源は「嵐」を意味する英語の「storm」に由来します。ドイツ語読みの「スツルム」や「ダークマーチ」といった呼称も存在しますが、これらは稀です。

ストームは、基本的に「バカ騒ぎ」を意味し、時には窓ガラスを叩き割るなどの破壊行為にまで発展することもありました。歓迎ストームや返礼ストーム、街に出て騒ぐ街頭ストーム、巨大な火を囲んで行うファイヤーストーム、夜中に新入生に抱負を語らせる説教ストームなど、様々な形態が存在しました。現在でも、一部の学校では学生によって「ストーム」と称する行事が行われています。

ストームには、「俺たちはこんなに楽しいんだから、お前たちも一緒に楽しもう」という連帯意識が根底にあります。無理やり他人を巻き込んでいくという点も特徴の一つです。

旧制学校におけるストーム

旧制高校では、ほとんどの学校でストームが行われていました。しかし、公式の行事ではないため、その起源を特定することは困難です。19世紀末から20世紀初頭には、現在知られているような形のストームが既に存在していたと考えられています。また、1880年代前半には、寮の2階の住人が床を踏み鳴らし、1階の住人が天井をほうきで突くといった行為が頻繁に行われていたという記録もあります。

旧制高校の学生生活を描いた作品では、夜中に寝ている学生が叩き起こされてストームが始まるという場面がよく見られます。説教ストームを除き、デカンショ節や寮歌などの歌と踊りが伴うものが多く、真夜中に鍋や太鼓を打ち鳴らし、寮歌などを歌いながら、数人から数十人が互いに肩を組んで寮の廊下を踏み鳴らす、壁や床を叩くといった行為が繰り返されました。寝ている人を叩き起こし、布団の上から叩いたり（布団蒸し）、服を剥ぎ取ったり、酒を飲ませたりといったことも行われていました。中には水を浴びせるなどしてストームに抵抗する者もいました。

学校当局や寮の規則によって、時間帯や試験期間中、対抗戦前などストームが禁止されることもありましたが、実際には守られないことが多かったようです。

戦後、食糧難で学生の体力が低下し、また戦況悪化により旧制高校生が戦争に動員されたため、ストームは沈静化しました。しかし、中には北杜夫が在籍していた旧制松本高校のように、上級生によって活発に行われた例も存在します。新学制への移行や寄宿舎の減少、男女共学化によるバンカラ文化の衰退とともに、旧制高校以来のストームは一部を除き消滅していきました。

新制学校におけるストーム

第二次世界大戦後の学制改革により、日本の学校体系は複線型から単線型に移行し、6・3・3・4制が導入されました。新制大学の多くは、旧制大学、旧制高校、大学予科、旧制専門学校、師範学校などを母体として発足しました。以下に、新制大学や高校におけるストームの例をいくつか挙げます。

大学

北海道大学：肩を組んで円陣を作り歌うストームが伝統で、「ストームの歌」として「札幌農学校は蝦夷ヶ島」で始まる歌があります。
室蘭工業大学：明徳寮では毎年6月、赤フン姿で寮歌を歌う赤フン行列や、大声で自己紹介をするストームがあります。
鹿児島大学：芋焼酎を一気飲みし、自己紹介をするストームが有名です。
一橋大学: 寮の新入生が津田塾大学の門を乗り越えて津田塾の寮へ押し掛けるストームが、大学当局公認の行事として行われています。かつては学内図書館前の池に飛び込む「池落ち」という行事もありましたが、1995年に禁止されました。
千葉工業大学：毎年10月に行われる千種寮祭で、ファイヤーストームや寮歌、応援歌などの伝統歌が披露されます。
京都大学：吉田寮祭や熊野寮祭では、放送機の占拠・死守を賭けた激しい攻防戦が行われます。その後、親睦を深める飲み会が行われ、その他にもファイヤーストームや仮装をして交流するなど、ストーム的なイベントが伝統的に行われています。
信州大学：修己寮では、正座で大声で自己紹介をする伝統行事があり、ストーム期間中は夜遅くまで大声が響きます。声が小さかったり間違えたりするとやり直しになります。
天理大学：男子寮では説教ストームのほか、「女子寮まわり」や「旧寮まわり」「外まわり」といった新入生歓迎の行事が昭和60年代まで行われていました。

高校

学園祭などで公式行事としてファイヤーストームが行われる新制高校も存在します。

佐賀県立佐賀西高等学校：学園祭初日に、旧制佐賀中学以来の校歌や寮歌を大焚火を囲んで全男子学生が歌う行事が継承されています。女子生徒の校内立ち入りが禁止され、男子生徒はストームリーダーによる指導を受けます。
愛知県立豊橋東高等学校：文化祭と体育祭を合わせた学校祭で、体育祭終了後に2年生のストームリーダーと1年生男子によりファイヤーストームが行われます。上半身裸で校歌などを歌う伝統行事です。女子生徒が意中の男子生徒にカルピスを渡す告白文化も受け継がれています。
* 福岡県立嘉穂高等学校：大運動会終了後に、3年生の男子生徒だけでふんどし姿で歌い、踊り、叫ぶ伝統があります。

このように、ストームは時代とともに形を変えながらも、一部の学校で今もなお受け継がれています。これらの事例から、ストームが単なる蛮行ではなく、学生間の連帯意識や伝統の継承という側面を持つことがわかります。

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