ストームZ

ストームZ：ロシアの懲罰部隊の実態

ストームZ（ロシア語: Шторм-Z）は、2023年4月にロシアが設立した一連の懲罰部隊です。その存在は、ウクライナ軍が押収した文書によって明らかになりました。この部隊は、ロシア国防省がワグネル・グループの囚人兵募集をモデルに設立したとされています。

編成と実態

ストームZ部隊のメンバーは、ロシアの刑務所から募集され、任務に成功すれば減刑と月給2,200ドルが得られるとされています。しかし、その実態は過酷なものであり、戦闘神経症に苦しむロシア軍部隊に配属されるケースが多いと指摘されています。

各中隊は約100名で構成され、制圧分隊、火力支援分隊、指揮要員、戦闘工兵グループ、偵察グループ、医療後送グループ、UAVチームなどが含まれます。しかし、訓練期間はわずか10～15日程度で、激しい戦闘が繰り広げられる最前線に投入されます。特に、バフムートやアヴディーイウカのような市街戦での投入が目立ちます。

ストームZ中隊は、ロシア陸軍第8親衛諸兵科連合軍や、未承認国家「ドネツク人民共和国」の軍隊「第1軍団」など、様々な部隊に所属しています。しかし、その戦闘環境は劣悪で、装備の不足や故障が頻発し、指揮官の指示も混乱していると報告されています。食料や水の調達さえ困難な状況で、士気は著しく低下しており、機会があればウクライナ軍に降伏する兵士も少なくありません。

ウクライナ反転攻勢におけるストームZ

ウクライナの反転攻勢が開始されると、ストームZ部隊はドネツク州ヴェリカ・ノヴォシルカ郊外で大規模な降伏を行いました。捕虜となった兵士たちは、ロシア軍のベテラン部隊が、懲罰兵と徴集兵からなる部隊の背後に配置され、撤退や降伏を試みる者に発砲する督戦隊として機能していると証言しました。このような督戦隊の存在は、ウクライナのドローンによっても確認されています。

また、ストームZ部隊は、スヴァトヴェ・クレミンナ戦線にも展開し、ウクライナ軍の陣地に対して「消耗度の高い攻撃」を繰り返しています。ここでも、ロシア空挺軍の2個師団が督戦隊として、部隊の退却を阻止する役割を担っています。

ワグネルの反乱との関わり

ワグネル・グループの反乱中、一部のストームZ部隊はワグネルに忠誠を誓い、エフゲニー・プリゴジンを支持しました。しかし、プリゴジンが反乱を中止した後、これらの部隊は彼を「臆病者」と非難し、「裏切られた」と主張しました。さらに、ワグネルを支持したことで、部隊の指揮官から懲罰を受けるという事態にもなりました。

ストームZ部隊は、参謀本部主要組織・動員総局のエフゲニー・ブルディンスキー上級大将によって監督されていますが、ロシアの民族主義者からは、ブルディンスキーがすべての部隊を管理しきれていないと批判されています。

まとめ

ストームZは、ロシア軍が戦力不足を補うために設立した懲罰部隊ですが、その実態は過酷であり、兵士たちは劣悪な環境下での戦闘を強いられています。士気の低下や装備の不足、指揮系統の混乱など多くの問題を抱え、ワグネルの反乱にも巻き込まれるなど、その存在はロシア軍の抱える深刻な問題を浮き彫りにしています。

関連項目

Z (軍隊符号)
ロシアの受刑者部隊

もう一度検索