ストーヤイ・デメ

ストーヤイ・デメ：ナチス協力と悲劇的な最期

ストーヤイ・デメ（1883年1月5日-1946年8月22日）は、複雑な経歴を持つハンガリーの軍人、政治家、外交官でした。セルビア系出身で、本名はストヤコヴィッチ。第一次世界大戦ではオーストリア＝ハンガリー軍に所属し、大佐に昇進。戦後は一時ユーゴスラビア軍に身を置いた後、ホルティ・ミクローシュ率いるハンガリー国民軍に参加し、共産主義者への弾圧に関与しました。

ホルティ政権下では少将に昇進、防諜部門を担い、1925年には駐ベルリン武官に任命されます。この期間に、ドイツ軍部や政界との広範な人脈を築きました。1927年には名をハンガリー風に改名。その後、国防省勤務を経て中将に昇進、1933年から1942年まで駐ドイツ大使を務めました。大使在任中は、ヒトラーやゲッベルスらナチス指導部と親密な関係を結び、ドイツへの協力姿勢をハンガリー政府に働きかけました。

1944年3月、ドイツ軍のハンガリー占領（マルガレーテI作戦）を受け、親独派であるストーヤイは、連合国との講和を目指したカーロイ・ミクローシュ首相の後任として、ホルティ摂政によって首相兼外務大臣に任命されます。ホルティは、ストーヤイが親独的であることを承知の上で、ドイツの圧力に抵抗できる人物と判断したとされています。

首相在任中、ストーヤイはドイツの政策を全面的に支持しました。東部戦線への軍増派、禁止されていたファシスト政党「矢十字党」の合法化、左派政党の弾圧、政治犯のゲシュタポへの引き渡しなど、強硬な政策を実行しました。内閣にはナチス寄りの人物を多数起用し、ユダヤ人強制移送を推し進めました。

しかし、ユダヤ人強制移送はホルティの反感を買い、解任の危機に瀕します。ヒトラーの介入によって辛うじて首相の座を保ちましたが、ホルティは8月7日、強制移送停止とナチス寄り閣僚の解任を通告、ストーヤイに圧力をかけました。病気療養中だったストーヤイは辞任に同意し、8月29日に首相を退陣。後任には親英米派のラカトシュ・ゲーザが就任しました。同年10月15日の「パンツァーファウスト作戦」でホルティとラカトシュが失脚した際も、ストーヤイは再任されず、矢十字党のサーラシ・フェレンツが首相に就任しました。

1945年4月、ドイツ敗北後、ストーヤイはハンガリーを脱出し、アメリカ軍に投降しました。しかし、10月にハンガリー臨時国民政府に引き渡され、戦争犯罪の容疑で人民裁判にかけられました。1946年3月22日、死刑判決を受け、8月22日に銃殺刑が執行されました。ストーヤイの生涯は、ナチス協力と悲劇的な結末を物語る、歴史の暗い一ページとなっています。彼の行動は、戦争と政治の複雑な側面、そして個人の選択がもたらす結果を改めて私たちに問いかけるものです。

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