スパッド A.2

SPAD A.2 機体概要

SPAD A.2（またはSA.2、A-2、A2）は、1915年に設計されたフランス製の牽引式複葉機で、軍用機としてはスパッド社の最初の量産機として知られています。第一次世界大戦が始まるやいなや、フランス軍やロシア軍で戦闘および偵察任務に使用されました。

設計と開発

この航空機は、スパッド社の主任設計士であるルイ・ベシュローの手によって開発されました。ベシュローは、スパッド A.1という原型機をもとに、航空戦の経験を踏まえたデザインを行いました。この時期、前方に機銃を装備することの重要性が認識されていたものの、プロペラと弾道を同期させる技術が未発達だったため、さまざまな解決策が模索されていました。

A.1は牽引式としてオーソドックスな形状を持ちつつ、プロペラの前に流線型のナセルを配置し、その中に銃手兼偵察員の席を設けました。この設計は、牽引式と推進式の利点を損なわずに取り入れようとしたものでしたが、着陸時にパイロットの視界を妨げるなどの欠点も抱えていました。特に、偵察員はプロペラのすぐ後ろに座るため、危険な状態にさらされることが多くありました。

ナセルには鋼鉄製の機銃架が設けられ、ここに可動式のルイス機関銃が取り付けられていました。ナセルの構造はエンジンへの空気供給を確保するため工夫されていましたが、全体的には一般的な木製骨組みと布張りの構造です。

A.1は1915年5月に初飛行を果たし、最高速度は153km/hに達しましたが、量産には至らず、改良型のA.2が誕生しました。このA.2は99機が生産され、そのうち42機はフランスに、57機はロシアへ送られました。

A.2の性能はナセルの設計が影響し、プロペラ効率が低下していました。そのため、パフォーマンスについては不満が残る乗り物として評判となりましたが、設計チームにとっては有意義な経験となりました。特に一張間の主翼に補助支柱を設ける技術は、後の設計に繋がっています。

バリエーション

SPAD A.3はA.2の練習機モデルで副操縦装置を搭載していますが、試作のみで生産は行われませんでした。A.4モデルでは110馬力のエンジンを搭載し、11機が製作された中の10機はロシアに供給されました。最終型のA.5はルノーエンジンを搭載したもので、評価会用として製作されましたが、こちらも試作にとどまりました。

戦歴

フランスにおけるSPAD A.2の使用は短く、乗員の不評もありました。特に機銃同調装置の進展により、A.2の設計がすぐに古くなると、新たな機種に取って代わられてしまいました。一方、ロシア帝国航空隊では長期にわたって使われることとなりますが、これは作戦機が不足していたためでした。冬季は車輪を橇に替え、実戦に投入されました。

ロシアでの具体的な使用状況はほとんど知られていないものの、撃墜の記録は残されています。1916年11月25日、パイロットのカルポフと偵察員のブラトリュボヴィムが、ドイツの航空機を撃墜したとされています。

使用国

• - フランス
• - ロシア帝国

スペック

• - 翼幅：9.55 m
• - 全長：7.30 m
• - 全高：2.65 m
• - 翼面積：24.56 m²
• - 空虚重量：435 kg
• - 全備重量：735 kg
• - エンジン：ル・ローン 9C ×1
• - 出力：80馬力
• - 最高速度：153 km/h
• - 航続距離：300 km
• - 飛行上限高度：4300 m
• - 上昇率：2000m/12分30秒
• - 乗員：2名
• - 武装：ルイス機関銃 ×1

この機体は、ただ単に古い設計の軍用機としてだけでなく、後の戦闘機設計にも影響を与えた重要な存在といえます。

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