スパンション

スパンション

スパンション (Spansion LLC) は、過去に存在した半導体製造企業です。主にフラッシュメモリ、中でもNOR型フラッシュメモリを主力製品とし、後にマイクロコントローラーやアナログ集積回路なども手掛けるようになりました。日本の富士通と米Advanced Micro Devices (AMD) の合弁事業として発足し、経営危機を乗り越えましたが、最終的に2015年、サイプレス・セミコンダクタに吸収合併され消滅しました。

設立から発展へ

スパンションの起源は、1993年4月に富士通とAMDがNOR型フラッシュメモリ製造のために設立した合弁会社、富士通エイ・エム・ディ・セミコンダクタ (FASL) です。当初の拠点は福島県会津若松市に置かれました。

2003年、AMDと富士通のフラッシュメモリ部門が統合されることになり、同年8月には米国に新会社FASL LLC、日本にFASL JAPANが設立され、旧FASLはこれに吸収されました。出資比率はAMD 60%、富士通 40%となり、日米両国に本社機能を置く体制となりました。

製造されるフラッシュメモリには「Spansion」ブランドが冠され、同社のNOR型フラッシュメモリは一時期トップシェアを誇りました。生産拠点は会津若松と米テキサス州にあり、携帯電話から組み込み機器まで幅広い分野向けに製品を展開しました。2004年6月には会社名がSpansionに変更され、日本法人もスパンション・ジャパンと改称、後に神奈川県川崎市に本社を移しました。

技術強化と経営の波

技術力強化のため、2007年10月にはイスラエルのSaifun Semiconductors社の買収を発表し、2008年3月に子会社化しました。Saifunが持つチャージトラップ技術は、スパンションのMirrorBit技術として製品に活かされました。

しかし、フラッシュメモリの単価下落という厳しい市場環境に直面し、経営が悪化。2009年3月1日、米国で連邦倒産法第11章に基づく会社再建手続きを申請しました。これに先立つ2月10日には、日本法人スパンション・ジャパンも東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請、負債総額は741億円に上りました。会社側は一時的な資金不足に対応するための措置とし、製品競争力やシェアの高さを背景に、事業再編を通じて営業継続を目指す方針を示しました。

再建成功と事業再編

再建計画は進み、2010年4月16日には米国倒産裁判所から再建計画案の承認を得ました。これは、徹底したコスト削減や、ワイヤレスから組み込みソリューション・IPライセンス事業への重点移行といった経営努力、そして2009年の好業績が実を結んだ結果とされました。

2010年5月10日、スパンションは連邦倒産法第11章の手続きから脱却し、再建を完了しました。手続き開始時の15億ドル超の負債は4.8億ドル以下に圧縮され、資本状況も大幅に改善しました。

日本国内では、2010年5月24日に新設された日本スパンション合同会社（NSKK）が、旧スパンション・ジャパンから販売関連部門を引き継ぎ、神奈川県川崎市の拠点で活動を継続し、富士通との連携も維持されました。一方、主要生産拠点であった会津若松工場は、米テキサス・インスツルメンツへ売却されました。

再建後も、NOR型フラッシュメモリ分野ではマイクロン・テクノロジに次ぐ世界第2位の地位を維持し、組み込み向け新製品投入などで攻勢を続けました。さらに、2013年4月には富士通セミコンダクターのマイコン・アナログ事業の買収を発表し、同年8月に完了させるなど、事業領域の拡大を進めました。

歴史の終焉

経営再建と事業拡大を果たしたスパンションでしたが、最終的に2015年、サイプレス・セミコンダクタに吸収合併され、その歴史に幕を閉じました。

もう一度検索