スピン (本)

スピン：本のしおり紐を紐解く

はじめに

この文章では、書籍の背表紙に付けられた紐状のしおり「スピン」について詳細に解説します。スピンは、製本における専門用語であり、英語圏では一般的に「ブックマーク」や「ブックマーカー」と呼ばれます。日本独自の表現であるスピンという名称の由来は不明ですが、書籍の背表紙を意味する英語の「spine（スパイン）」とは異なります。

スピンの構造と製本工程

スピンは、通常、安価な平織りの紐が使われます。本の対角線より約5cm長く作られ、本の背表紙上部に直接糊付けされるか、背表紙と見返し（花ぎれ）の間に接着されます。現代の製本機械では、スピンの挿入と糊付け、余分な紐の処理まで自動化されています。

上製本の場合、表紙をくるむ工程の前にスピンを取り付けます。一方、並製本（文庫本や新書など）では、スピンを取り付ける工程が製本の初期段階となるため、天の断裁（三方断裁）ができません（天アンカット）。天アンカットはコストが高いため、多くの並製本ではスピンの代わりに紙製のしおりが用いられています。

スピンの歴史と文庫本

日本の伝統的な和装本や大和綴じには、スピンは用いられませんでした。スピンは洋装本の製本技術とともに明治以降に日本に伝来したものです。和綴本においても、造本の都合上、スピンは通常使用されません。

1927年に創刊された岩波文庫は、スピン付きの製本を採用し、多くの後発文庫本もこれを踏襲しました。しかし、コスト削減のため、1970年代以降、多くの出版社がスピンを廃止していきました。

一時期、新潮文庫のみがスピンを採用し続け、その特徴の一つとして認識されていましたが、近年では福武文庫、ウェッジ文庫、星海社文庫、日経文芸文庫などでもスピンを採用した例が見られます。ただし、これらの文庫は休刊、もしくは新規刊行が途絶えている状況です。

スピンの利点と欠点

スピンの利点は、しおりとして使用する場合、紙製のしおりと比べて紛失しにくい点です。しかし、コストや製本工程の複雑さといった欠点もあります。そのため、コスト削減を重視する出版社では、スピンを採用しない傾向にあります。

結論

スピンは、日本の製本における独特の伝統とコスト削減のバランスの上に成り立ってきた製本技術の一つです。その歴史や構造、現状を理解することで、書籍に対する理解が深まるでしょう。今後、スピンを採用する出版社が増えるかどうかは、コストとブランドイメージといった様々な要素が絡み合う複雑な問題です。

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