岩波文庫

岩波文庫の歴史と特徴

概要

岩波文庫（いわなみぶんこ）は、株式会社岩波書店が発行する文庫本レーベルであり、1927年7月10日に創刊されました。当時、日本は教養や啓蒙主義の時代にあり、ドイツのレクラム文庫をモデルにして、書籍の安価な流通を実現し、多くの人々が学術的な作品を気軽に楽しむことを目的としていました。これは、日本における初の文庫本の登場であり、幅広く古典や学術書を扱っています。

最初の刊行作品は、夏目漱石の『こゝろ』や、森鴎外の『五重塔』、そして『にごりえ・たけくらべ』など22点を含んでいます。戦前はエドウィン・アーノルドの詩や賀茂真淵の国学文献などが取り上げられ、戦後は多くの名著が刊行されています。1991年にはワイド版が創刊され、名作の収録が進められています。

製本と価格設定

岩波文庫の初期作品は、特異な製本であり、カバーなく糸かがりや天アンカットの形式でした。1980年代にカバーを導入し、1990年からは一括復刊作品にもカバーを付けるスタイルが取られました。また、定価は金額ではなく星印で示されるユニークな方法が採用され、1973年より価格引き上げが星数によって通知されていました。1975年からは☆マークが導入され、価格更新がされました。

分類とISBN問題

岩波文庫はジャンルによって分類され、カバーの色がそれを示しています。著者番号も1974年から導入され、各作品はこの番号に従って振り分けられます。しかし、同じISBNコードを異なる作品に使用することがあり、古書市場での混乱を招いています。これに対処するため、国立情報学研究所が異なる識別番号を付与して、作品を明確に区別する努力を行っています。

最近の新刊には、新しいISBNコードが付与されることが増えており、古典文学編集の厳密さが求められています。

課題と批判

評価の高い岩波文庫ですが、過去にはいくつかの問題が浮上しています。例えば、『紫禁城の黄昏』の抄訳問題では必要な章が省かれ、読者に誤解を与えました。また、旧版『危機の二十年』には多数の誤訳が指摘され、その後新訳版が登場しました。さらに、『きけ わだつみのこえ|きけ_わだつみのこえ』については遺族からの改変批判があり、その結果として新しい版の修正で訴訟が解決を見ました。

収録されていない古典

岩波文庫は多様な古典を網羅していますが、一部の著名な古典作品は未収録です。例えば、『ギルガメシュ叙事詩』や『戦国策』、『ウパニシャッド』などがあります。これらの古典の収録が求められている一方で、編集部は新たな試みにも取り組んでいます。

結論

このように、岩波文庫は日本の文庫本文化に多大な影響を及ぼし、古典から現代までの幅広い作品を提供し続けている重要なレーベルです。製本や価格設定、分類方法、さらには著作権問題にまで踏み込むその姿勢は、多くの読者や文学愛好家にとって魅力的な資源として存在しています。

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