スピード (映画)

アクション映画史に残る金字塔『スピード』：あらすじ、製作秘話、そしてその衝撃

1994年、ハリウッドに衝撃が走った。キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックという豪華キャストを迎え、ヤン・デ・ボン監督がメガホンをとったアクションスリラー映画『スピード』である。

息つく暇もない展開：手に汗握る攻防

本作は、ロサンゼルスのオフィスビルで発生したエレベーター爆破事件から始まる。SWAT隊員ジャック・トラヴェン（キアヌ・リーブス）は、犯人逮捕に挑むものの、逃亡を許してしまう。犯人はその後、路線バスに爆弾を仕掛け、速度が時速80キロメートルを下回ると爆発するという恐ろしいゲームを始める。

ジャックは、バスに乗り込んだ乗客たちを救うため、免停中のアニー（サンドラ・ブロック）と共に、絶体絶命の状況下で犯人との知恵比べを繰り広げる。バスは次々とトラブルに見舞われ、寸断された高速道路をジャンプするなど、まさに息つく暇もない展開が観客を魅了する。

犯人は、過去に爆発事故で負傷し警察を恨む元爆発物処理班員ハワード・ペイン（デニス・ホッパー）だった。彼は警察への復讐を企て、ジャックを翻弄する。

ジャックとアニーは、犯人の罠を一つ一つ解き明かし、乗客の脱出に成功する。しかし、犯人はアニーを人質にとり、地下鉄に乗り込む。最終的には、ジャックの機転で電車は脱線し、犯人は死亡、乗客は全員救出されるという、手に汗握る結末を迎える。

製作秘話：アイデアの着想から脚本の変遷まで

『スピード』のアイデアは、監督のヤン・デ・ボンが20世紀フォックスのエレベーター故障で閉じ込められた経験から生まれたという。当初の脚本は、バス爆破事件から始まるシンプルなものだったが、20世紀フォックスは、よりドラマ性を高めるため、エレベーター爆破シーンの追加を要求。グレアム・ヨストによる初期の脚本は、その後、ジョス・ウェドンによって大幅に書き換えられ、登場人物や会話が洗練された。

キアヌ・リーブスはジャック・トラヴェン役のために、2ヶ月間トレーニングに励んだ。アニー役には、サンドラ・ブロック以外にも、ハル・ベリーやメリル・ストリープなど、多くの女優の名前が挙がっていたという。

撮影はロサンゼルスで行われ、高速道路シーンは、当時工事中だったインターステイト105と110を利用。その際、デ・ボン監督は道路が途切れている場所を発見し、バスジャンプシーンが追加されたというエピソードも残っている。

記録的な大ヒットと高い評価：アクション映画の新たな地平

『スピード』は、3,000万ドルから3,700万ドルの製作費に対し、世界中で3億5,040万ドルという驚異的な興行収入を記録した。アカデミー賞では、音響効果編集賞と音響賞を受賞し、そのクオリティの高さが認められた。

本作は、従来の銃撃戦中心のアクション映画とは一線を画し、犯人との頭脳戦と、バスという閉鎖空間でのスリリングな展開が、世界中の観客を魅了した。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック、そして監督のヤン・デ・ボンを一躍スターダムに押し上げた、名実ともに成功を収めた作品である。

さらに、キアヌ・リーブスが劇中で着用したカシオのG-SHOCKは「スピードモデル」として人気を博し、現在でも多くのファンに愛されている。バスの撮影に使用された車両も、イベントで展示されるなど、作品自体の歴史的価値も高い。

1997年には続編『スピード2』が公開されたものの、キアヌ・リーブスは出演せず、本作で描かれた「極限状況で始まった恋は長続きしない」というセリフが、続編への伏線として使われているなど、さまざまな点で興味深い作品だ。

『スピード』は、単なるアクション映画の枠を超え、その革新的な演出とストーリー、そして豪華なキャストによって、映画史に燦然と輝く金字塔として語り継がれている。

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