スプートニク7号

スプートニク7号：金星探査を目指したソ連の挑戦と挫折

1961年2月4日、ソビエト連邦は世界で初めて金星探査を目的とした宇宙探査機、スプートニク7号を打ち上げました。しかし、この探査機は技術的な問題により金星軌道に到達できず、地球周回軌道にとどまったまま大気圏に再突入するという、悲劇的な結末を迎えました。

開発と設計

スプートニク7号は、以前の火星探査計画で用いられたM1型火星探査機（マルスニク1号・2号）の設計を基に開発されました。探査機本体は、半球と円筒を組み合わせた形状で、質量は645kg。搭載された観測機器は、金星大気に関するデータを収集する役割を担っていました。具体的には、磁力計、垂直速度計、荷電粒子モニターなどが搭載され、金星大気に突入しながら、その組成や磁場などを調査する計画でした。さらに、世界で初めて金星表面への着陸を目指していたため、記念品も搭載されていたと推測されます。

打ち上げと失敗

バイコヌール宇宙基地からモルニヤロケットによって打ち上げられたスプートニク7号は、ロケットの第4段と結合した状態で、一旦地球周回軌道に投入されました。計画では、地球を1周した後、金星への遷移軌道へ入るためにロケットのエンジンを点火する予定でした。しかし、恐らくはガイダンスシステムへの電力供給に問題が発生したため、エンジンは点火せず、探査機は地球周回軌道にとどまりました。その後、地球の大気圏との摩擦による空気抵抗の影響を受け、軌道高度は徐々に低下。打ち上げから22日後の2月26日、スプートニク7号はロケットと結合したまま大気圏に突入し、燃え尽きました。

情報の隠蔽と憶測

スプートニク7号は、ロケットと結合した状態であったため、その質量は6843kgにも及びました。この巨大な人工衛星の正体は、ソ連によってしばらくの間明らかにされませんでした。そのため、西側諸国では、失敗した有人宇宙船ではないかといった憶測が飛び交いました。後に、ソ連は公式にスプートニク7号の目的を「惑星間探査機を打ち上げ可能な地球周回プラットフォームの実験」であったと発表しました。しかし、その真の目的や技術的な問題の詳細は、いまだ不明な点が多く残されています。

スプートニク7号の意義

スプートニク7号は金星探査という点では失敗に終わりましたが、惑星探査機の技術開発や、地球周回軌道における大型人工衛星の運用に関する貴重な知見を得ることに貢献しました。この経験は、後のベネラ計画などの成功へと繋がる重要な礎となりました。また、この計画における情報公開の遅れや、憶測の拡散は、宇宙開発における情報戦略の重要性を改めて認識させる出来事となりました。スプートニク7号の失敗は、後の宇宙探査計画における技術向上や、国際的な情報共有の必要性を示す、重要な歴史的教訓と言えるでしょう。

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