スペインの地方行政区画

スペインの行政区分は、多層的な構造を特徴としています。全国には50の県（provincia）が存在し、これらが17の自治州（comunidad autónoma）にまとめられています。さらに、アフリカ大陸にはセウタとメリージャの2つの自治都市（ciudad autónoma）があります。

各県は、基礎自治体であるムニシピオ（municipio）によって構成されており、その数は8111にも及びます。州によっては、県とムニシピオの間にコマルカ（comarca）と呼ばれる中間的な行政区分が設置されている場合もあります。この多様な行政区分は、スペインの歴史と地域特性を反映したものです。

スペインの行政区分システムは、歴史的に大きな変化を遂げてきました。かつては県が1級行政単位でしたが、1978年の憲法改正によって自治州制度が導入されました。1979年から1983年にかけて、順次17の自治州が設置され、1995年にはセウタとメリージャが自治都市として認められました。この制度改革は、スペインにおける地方分権化の進展を象徴する出来事でした。

近年では、カタルーニャ州における独立運動が、スペインの行政区分システムに大きな影響を与えました。2010年には、カタルーニャ州議会でベゲリアス法案が可決されました。これは、中世以来の歴史的制度であるベゲリア（Vegueria）を復活させることを目指すものでした。この法案は、現在のカタルーニャ州を4県から8つのベゲリアに再編することを提案していましたが、実現には至りませんでした。

2017年10月27日、カタルーニャ州議会はカタルーニャ独立を一方的に宣言しました。これに対してスペイン政府は、憲法第155条に基づきカタルーニャ州の自治権を剥奪し、中央政府による直接統治を開始しました。これは、1978年憲法制定後、初めて自治州の自治権が政府によって剥奪された歴史的な出来事でした。その後、約7か月間にわたる直接統治期間を経て、2018年6月にカタルーニャ州政府に自治権が返還されました。

スペインの行政区分は、自治州、県、ムニシピオという主要なレベルに加え、コマルカなどの中間的な区分も存在する複雑な構造を持っています。この構造は、歴史的背景、地域特性、そして近年の政治的出来事を反映しており、今後も変化を続ける可能性があります。それぞれの区分が持つ権限や役割は、スペインの政治・行政システムを理解する上で重要な要素であり、複雑な歴史的経緯と、地方分権と中央集権のバランスという課題が絡み合っていることを示しています。 自治州一覧などは、参考文献を参照ください。

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