スペルガの悲劇

スペルガの悲劇について

スペルガの悲劇（伊：Tragedia di Superga）は、1949年5月4日にイタリアのトリノ近郊で発生した悲惨な航空事故です。この事故では、乗員と乗客合わせて31名が犠牲となり、その中には名門サッカークラブACトリノの選手18名とスタッフが含まれていました。

背景

当時、ACトリノはセリエAの強豪クラブとして特に有名で、「Grande Torino」とファンから称えられるほどの人気を誇っていました。1948年からのシーズンでは、エースであるヴァレンティーノ・マッツォーラを中心にチームは好調を維持しており、リーグ5連覇が期待されていました。1949年5月4日、チームはポルトガル・リスボンで行われたベンフィカとの親善試合を終え、アリタリア航空のフィアットG.212型機にてトリノに向かうこととなります。

しかし、この日のトリノ周辺は激しい雷雨に見舞われ、視界は非常に悪化していました。飛行機はこの悪天候の中で制御を失い、スペルガ聖堂の外壁に衝突し、大破する結果となります。事故により、ACトリノの選手たちとクラブスタッフら全員が命を落としました。

幸運にも、ACトリノの主力メンバーの一人であるサウロ・トマや、当時イタリアに亡命していたハンガリー人のFWラディスラオ・クバラは、負傷や家庭の事情で旅行に参加していなかったため、事故を免れました。

事故の影響

この事故で失われた選手たちは、イタリア代表にも名を連ねる実力者たちであり、彼らの死はイタリアサッカー界にとって深刻な打撃となりました。犠牲者を悼む国葬が執り行われ、当時の監督やフロント陣も正式に追悼されました。

ACトリノは優勝目前にしてチームの全てを失った結果、残りのリーグ戦をユースチームで戦うこととなりましたが、他のクラブもその意義を認め、同様にユースチームで対抗したため、この年のスクデットはそのままACトリノに授与されました。

事故後、ACトリノはクラブの再建には苦しみ、成績は低迷。1959-60シーズンにはセリエBに降格するなど、復活までには非常に長い年月がかかりました。そして、事故の影響はイタリア代表にも及び、再建が間に合わなかったため、1949年のワールドカップでは早期に敗退しました。

この事故の後、ACトリノのエースであったヴァレンティーノ・マッツォーラには、当時まだ幼い息子アレッサンドロがいましたが、彼も後に父の跡を継ぎ、ミラノのインテルに入団しました。アレッサンドロはのちにサンドロ・マッツォーラとしてイタリアサッカー界で名を馳せました。

関連項目

この悲劇に類似した事故は他にも存在します。1958年のミュンヘンの悲劇や、1961年のグリーン・クロスの悲劇、さらに1989年のカラフル11の悲劇など、多くのサッカー関連の航空事故が発生しています。これらの事故は、サッカーの歴史に暗い影を落としているのです。

スペルガの悲劇は、イタリアサッカー界において忘れられない出来事であり、今なお多くの人々に知られ語り継がれています。

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