スペンサー・デイヴィス・グループ

バンドの概要と結成

1960年代のイギリスで誕生したロックバンド、スペンサー・デイヴィス・グループは、ギタリスト兼ボーカリストのスペンサー・デイヴィス（1939年 - 2020年）を中心に結成されました。初期のラインナップは、他にベーシストのマフ・ウィンウッド、ドラマーのピート・ヨーク、そして卓越した歌唱力とオルガン演奏で注目を集めたスティーヴ・ウィンウッドによって構成されていました。

初期の大成功

1965年にレコードデビューを果たした彼らは、翌1966年から1967年にかけて急速に成功を収めます。ブルースやR&Bに根ざした彼らのサウンドは、瞬く間に人気を獲得し、「キープ・オン・ランニン」「サムバディ・ヘルプ・ミー」「愛しておくれ（Gimme Some Lovin'）」「アイム・ア・マン」といった楽曲がイギリスのヒットチャートで次々と上位にランクインしました。特に「愛しておくれ」と「アイム・ア・マン」は海を越えてアメリカでも成功を収め、ビルボードのシングルチャートでそれぞれ7位と10位を記録しました。当時まだ十代後半だったスティーヴ・ウィンウッドは、そのソウルフルでパワフルな歌声と、表現豊かなオルガン演奏で、グループのサウンドの中核を担い、メディアから高い評価を受けました。彼らのサウンドは、後に「ブルー・アイド・ソウル」と呼ばれるジャンルの先駆けの一つとも見なされています。

メンバーの脱退とその後

しかし、グループの絶頂期であった1967年、バンドのサウンドの要であったスティーヴとマフのウィンウッド兄弟がグループを脱退するという大きな変化が起こります。この主要メンバーの離脱は、バンドの音楽性と活動に影響を与え、かつてのような勢いを維持することが難しくなりました。

スペンサー・デイヴィスの道のり

バンドの中心人物であるスペンサー・デイヴィスは、バンドの商業的な成功とは裏腹に、当時のレコード契約、特にアイランド・レコードとの間に経済的な問題があったことを後に語っています。多くのヒット曲を生み出したにもかかわらず、十分な報酬が得られず、一時は破産寸前の状況に陥ったといいます。彼はその後、アメリカのロックバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドの楽曲制作に関わる機会を得て、そこからの収入によって経済的な困難を乗り越えました。この際の報酬は、過去のヒット曲から得たものよりも大きかったと回想しています。また、アイランド・レコードの設立者クリス・ブラックウェルと交渉を重ね、ボブ・マーリーやロバート・パーマー、エディ＆ホット・ロッズといったアーティストのプロモーションに関わることで、収入の安定を図りました。スペンサー・デイヴィス自身は、その後も音楽業界に携わり続け、1970年代にはジャズ作品のプロデュースも手掛けました。晩年は主にライブ活動を中心に精力的に活動を続けましたが、2020年に81歳でその生涯を閉じました。

スティーヴ・ウィンウッドの多岐にわたる活動

スペンサー・デイヴィス・グループを脱退したスティーヴ・ウィンウッドは、その後も音楽活動を続け、ブラインド・フェイスやトラフィックといった重要なバンドを結成し、批評家から高い評価を得るアルバムを発表しました。また、日本人音楽家のツトム・ヤマシタが主宰したプロジェクト「ゴー」にも参加しています。ソロアーティストとしてのキャリアも積む中で、一時的に商業的な成功から遠ざかる時期もありましたが、1981年のアルバム『アーク・オブ・ア・ダイバー』からのシングル「ユー・シー・ア・チャンス」や、アルバムタイトル曲のヒットを皮切りに再び注目を集めました。その後も「ヴァレリー」「ハイアー・ラヴ」「ロール・ウィズ・イット」といった楽曲を次々とヒットさせ、AOR（アダルト・オリエンテッド・ロック）やアダルト・コンテンポラリーの分野で確固たる地位を築き、世界的な成功を収めました。

楽曲の遺産とメンバー、ディスコグラフィ

スペンサー・デイヴィス・グループの代表曲である「愛しておくれ」は、発表から半世紀以上を経た現在でも広く知られており、ブルース・ブラザーズをはじめとする多数のアーティストによってカバーされています。また、スティーヴ・ウィンウッド自身も、ソロライブの重要なレパートリーとしてこの曲を演奏し続けており、楽曲は世代を超えて愛され続けています。

グループは活動期間中に多くのメンバーが入れ替わっており、初期の４人以外にも多数のミュージシャンが在籍しました。活動時期や地域によって編成が異なった時期もあります。初期の主要なアルバムには以下のようなものがあります。

• - 『ゼア・ファースト・LP』 - Their First LP (1965年)
• - 『セカンド・アルバム』 - The Second Album (1966年)
• - 『オータム '66』 - Autumn '66 (1966年)
• - 『ウィズ・ゼアー・ニュー・フェイス・オン』 - With Their New Face On (1968年)
• - Funky (初出タイトル『Letters From Edith』, 1969年)
• - 『グラッゴ』 - Gluggo (1973年)
• - 『リヴィング・イン・ア・バック・ストリート』 - Living in a Back Street (1974年)

これらの作品は、彼らが1960年代のブリティッシュ・ビートシーンに残した足跡を示しています。

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