スペースX Crew-5

スペースX Crew-5：国際宇宙ステーションへの新たなミッション

スペースX Crew-5は、NASAの商業乗員輸送プログラムにおける重要なミッションであり、クルードラゴン宇宙船による5回目の飛行、そして有人軌道飛行としては8回目の挑戦です。2022年10月5日に打ち上げられ、国際宇宙ステーション（ISS）へ4名の宇宙飛行士を送り届けました。

多国籍クルー

このミッションの特筆すべき点は、その国際色豊かなクルー構成です。NASAからは2名（ニコール・マン船長、ジョシュ・カサダ操縦士）、JAXA（宇宙航空研究開発機構）から1名（若田光一）、そしてロシアのロスコスモスから1名（アンナ・キキナ）が参加しました。

ニコール・マン船長とジョシュ・カサダ操縦士、若田光一は元々ボーイングのスターライナー計画に割り当てられていましたが、同計画の遅延に伴い、Crew-5へ参加することになりました。アンナ・キキナはソユーズMS-22からの再割り当てです。若田光一宇宙飛行士は4度の宇宙飛行経験を持つベテランですが、他の3名にとっては今回が初の宇宙飛行となりました。

ソユーズ・ドラゴン交換システム

Crew-5は、ソユーズ・ドラゴン交換システムの一環として、ロシア人宇宙飛行士のアンナ・キキナが搭乗した初めてのクルードラゴンミッションです。このシステムは、NASAとロスコスモスがそれぞれの宇宙飛行士を相手国の宇宙船に搭乗させることで、ISSにおける両国の存在を保証し、どちらかの宇宙船が長期的に飛行停止になった場合でも、互いに独立した輸送手段を維持できるようにすることを目的としています。

アンナ・キキナの搭乗は、2002年のSTS-113ミッションでニコライ・ブダーリンがスペースシャトルに搭乗して以来、アメリカの宇宙船にロシア人宇宙飛行士が搭乗した初の事例であり、アメリカの宇宙カプセルからのロシア人宇宙飛行士の打ち上げとしては初の出来事でした。

ミッションの概要

スペースXの5回目の商業運用ミッションは、2022年10月5日に打ち上げられ、2023年3月11日に地球へ帰還しました。ISS滞在中、クルーは科学研究、技術実証、そしてISSの維持管理に携わりました。

ソユーズMS-22のバックアップ

2022年12月、ソユーズMS-22宇宙船に微小隕石が衝突し、冷却システムに損傷が発生しました。この事態を受け、ソユーズMS-22の安全性が懸念されるようになり、代替機としてソユーズMS-23が無人で打ち上げられました。

ソユーズMS-23がISSにドッキングするまで、スペースX Crew-5は、緊急時にMS-22のクルーを地球へ帰還させるためのバックアップオプションと見なされていました。クルードラゴンは元々7名同時搭乗を想定して設計されていたため、このオプションが可能でした。NASAの宇宙飛行士フランシスコ・ルビオの座席内張が、緊急脱出に備えてソユーズMS-22からクルードラゴン・エンデュランスへ移されました。この変更により、MS-22の熱負荷が減少し、クルー保護能力が向上しました。

2023年2月26日にMS-23がISSに到着すると、ルビオの座席内張は新しいソユーズに移され、セルゲイ・プロコピエフとドミトリー・ペテリンの座席内張はソユーズでの帰還に備えてMS-22からMS-23に移されました。

関連事項

ドラゴン C206 エンデバー
ドラゴン C207 レジリエンス
ドラゴン C210 エンデュランス
CST-100 ボーイング・スターライナー

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