スマート・フォーフォー

スマート・フォーフォー：小型車の歴史を彩った一台

スマート・フォーフォーは、メルセデス・ベンツグループ傘下のスマートがかつて製造・販売していた、欧州Aセグメントに分類される小型自動車です。5人乗りの5ドアハッチバックというボディスタイルが特徴で、その歴史は2004年から2021年まで続きました。フォーツーに続くスマートの2車種目として登場し、その後継モデルとして2023年デビュー予定のスマート＃1が存在しますが、直接的な後継車ではありません。

初代モデル(W454)：三菱との協業

初代フォーフォー(2004-2007年)は、三菱自動車工業との提携により開発されました。三菱コルトとプラットフォームを共有し、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式を採用。これは、リアエンジン・リアドライブ(RR)方式を採用するフォーツーと大きく異なる点です。パワートレインには、三菱とダイムラーが共同開発した1.1L～1.5Lの直列3気筒または4気筒エンジンが搭載されました。また、ディーゼルエンジンモデルも存在しました。

装備面では、ESP、ABS、エアバッグといった安全装備に加え、オプションでパノラマサンルーフ、アルミホイール、ナビゲーションシステムなどを選択可能でした。生産はオランダのVDLネッドカーで行われ、販売はヨーロッパを中心に展開されました。廉価モデルも存在しましたが、販売不振により短期間で生産終了となりました。

高性能版として、ブラバスによるチューニングモデルも登場しました。1.5Lのターボチャージャー付きエンジンを搭載し、177馬力を発揮するハイパフォーマンスモデルとして人気を博しました。

2代目モデル(W453)：ルノーとの協業

2代目フォーフォー(2014-2021年)は、ルノーとの協業によって誕生しました。ルノー・トゥインゴおよび3代目フォーツーとプラットフォームを共有し、リアエンジン・リアドライブ(RR)方式へと回帰しました。エンジンはルノーと日産との共同開発による、999ccと898ccの直列3気筒エンジンが搭載され、ダウンサイジング化が図られました。

ボディは、高張力鋼製のトリディオンセーフティセルと交換可能なプラスチック製ボディパネルを組み合わせた構造となりました。初代モデルと比較してボディサイズはコンパクト化されています。この2代目では、ガソリンモデルとEVモデルのEQフォーフォーがラインナップされました。スマートがEV専業ブランドへ移行することに伴い、2019年にガソリンモデルの生産が終了。その後もEQフォーフォーは販売が続けられましたが、2021年に生産を終了し、販売も終了しました。

2代目でも、ブラバスチューニングモデルが用意されました。898ccターボエンジンをベースに、90馬力から108馬力にパワーアップされています。

スマート・フォーフォーのコンセプトモデル

2代目フォーフォーの登場前には、2013年のフランクフルトモーターショーで「スマート・フォーフォー・ジョイ・コンセプト」が発表されました。ドアとルーフのないオープンタイプのコンセプトカーで、フルアルミニウム製のトリディオンセーフティセルやLEDライトなどが特徴的でした。パワートレインは、フォーツーで採用されていたEVシステムが使用されました。

その他

プラグインハイブリッドモデルも存在しました。リチウムイオンバッテリーとディーゼルエンジンを組み合わせ、最大32kmの電気走行を可能としています。

スマート・フォーフォーは、異なるメーカーとの協業を通じて進化を遂げたモデルです。時代の流れとともに、ガソリンエンジンからEVへと移行し、その歴史に幕を閉じました。しかし、そのコンパクトなボディと個性的なデザインは、多くの人々の記憶に刻まれています。そして、後継モデルであるスマート＃1へとその技術や思想は受け継がれていくことでしょう。

もう一度検索