スミスフィールド

スミスフィールド：ロンドンの歴史を刻む場所

シティ・オブ・ロンドンの北西部に位置するスミスフィールドは、その名前の由来が平坦な野原を意味する「Smooth field」の訛りであるという説もある、歴史深い地域です。中世、スミスフィールドは馬上槍試合などの馬上競技が行われるレジャーの場として賑わっていました。

1102年には、ヘンリー1世の従者であった吟遊詩人兼道化師のレヒアによって、聖バーソロミュー修道院が建設されました。ローマ巡礼中に聖バーソロミューの幻覚を見たというレヒアは、修道院長となり、聖バーソロミューの祭日には修道院周辺で市を開きました。この市は、レヒアが手品などを披露して資金を集めたとも言われ、やがて「バーソロミューの市」として発展していきました。修道院が1538年に解散した後も、市は盛況を続けました。この市では、奇蹟劇や聖史劇といった演劇のほか、レスリングや演奏、奇術、移動動物園など、様々な見世物が提供され、人々を楽しませました。

スミスフィールドは、市場としても古くから栄えていました。10世紀から家畜市場が形成され、ロンドン最古の市場の一つとして800年以上にわたり、肉などの売買が行われていました。1867年に家畜市場が閉鎖されると、翌年には新たなスミスフィールド食肉市場が設立され、古い市場に代わって重要な食肉供給拠点となりました。現在でも、競走馬などの売買や、その品質を見極めるためのオークションレースが行われています。

しかし、スミスフィールドの歴史は、暗い影も併せ持っています。古くから公開処刑の場として利用されており、特にメアリー1世の治世には、多くのプロテスタントが火あぶりの刑に処されました。この悲劇的な歴史は、ジョン・フォックスの『殉教者列伝』にも記録されています。

スミスフィールドは、チャールズ・ディケンズの小説『オリヴァー・トゥイスト』にも登場するなど、文学作品にもその名を残しています。

このようにスミスフィールドは、中世のレジャーの場、活気ある市場、そして公開処刑場という、対照的な側面を持つ歴史的な地域です。長い歴史の中で、様々な出来事がこの地で起こり、現在に至るまで、その痕跡は街の風景や人々の記憶に刻まれています。その歴史的背景を知ることで、スミスフィールドの持つ多様な魅力をより深く理解することができるでしょう。

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