スモール・タウン・ガール (1953年の映画)

『スモール・タウン・ガール』は、1953年に公開されたアメリカのミュージカル映画です。ラズロ・カルドスが監督を務め、ジェーン・パウエル、ファーリー・グレンジャー、アン・ミラーといったスターが出演しました。日本では劇場公開されていません。

本作の大きな魅力の一つは、バスビー・バークレーが振付を担当した、華やかで創造性豊かなダンスシーンの数々です。中でも、ボビー・ヴァンが街中を軽快に跳び回る「Street Dance」は、観る者を惹きつけ、映画史に残る名場面として知られています。また、ナット・キング・コールの歌声が映画に深みを与えています。

劇中歌である「My Flaming Heart」（ニコラス・ブロドスキー作曲、リオ・ロビン作詞）は、アカデミー歌曲賞にノミネートされ、その音楽的な質の高さも評価されました。

物語は、自己中心的なブロードウェイのスター女優リサ・ベルモントと交際しているリック・ビロウ・リヴィングストンが、小さな街でスピード違反により30日の服役を言い渡されるところから始まります。リックは、ひょんなことから裁判官の娘シンディ・キンベルと出会い、彼女に協力を仰ぎ、ある計画を実行しようとします。それは、病気の母親の誕生日を偽って一日だけ脱獄し、リサに会いに行くというものでした。シンディはリックに同行するうちに、徐々に彼に惹かれていきます。一方、ドクター・シルマーは、息子ラドウィグとリサを結婚させようと画策しますが、ラドウィグ自身はブロードウェイでの成功を夢見ていました。

制作の裏側では、MGMのプロデューサーであるジョー・パスタナクが、カントリー・ミュージックのスター、ハンク・ウィリアムズに保安官役をオファーしたものの、断られたというエピソードがあります。最終的にこの役はジョナサン・コットが演じることになりました。また、ウィリアムズがMGMの重役と面会した際、無礼な態度をとったため、映画出演の機会を逃したという逸話も残っています。これらの出来事は、2015年の映画『アイ・ソー・ザ・ライト』でも描かれています。しかし、ウィリアムズは本作公開の3ヶ月前にこの世を去りました。

公開当時、MGMの記録によると、アメリカとカナダで136万5000ドル、海外で76万2000ドルの興行収入を上げましたが、28万7000ドルの赤字となりました。

近年では、ボビー・ヴァンが歌い踊る楽曲「Take Me to Broadway」（別名「Jumping Song」）が、CMやミュージックビデオに引用されるなど、再び注目を集めています。例えば、ゴールドフラップの2008年の楽曲「Happiness」では、陽気な男性が街中をジャンプし、街行く人々と握手し、ゴミ箱の蓋をシンバルのように扱うシーンがあります。また、ピーター・ウルフは1987年の楽曲「Come As You Are」で、このシーンを再現しています。2014年の第68回トニー賞授賞式では、オープニングでヒュー・ジャックマンがこのシーンを再現し、舞台裏のモニターにはボビー・ヴァン本人が映し出されました。さらに、アメリカ映画のダンスシーンを集めた1985年の映画『ザッツ・ダンシング』にも、この楽曲が取り入れられています。

『スモール・タウン・ガール』は、公開当時は興行的に成功したとは言えませんが、そのユニークなダンスシーンや音楽、そして魅力的なストーリーによって、現在でも多くの人々に愛され続けている作品です。

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