スラヴャンスク (哨戒艇)

スラヴャンスク（旧USCGCクッシング）について

スラヴャンスクは、ウクライナ海軍が運用していたアイランド型カッターであり、その前身はアメリカ沿岸警備隊のUSCGCクッシングです。アメリカ沿岸警備隊時代には、多数の人道支援や軍事作戦に従事し、その実績を買われてウクライナへ譲渡されましたが、2022年にロシアの侵攻によって対艦ミサイルの攻撃を受け、沈没しました。

設計と建造

スラヴャンスクは、アイランド型カッターとしてルイジアナ州のボリンジャー造船所で建造されました。アイランド型カッターは、全長34m、幅6.4m、喫水2.1mで、最大排水量は156トンです。推進機関には、Paxman Valenta 16CMまたはCaterpillar 3516ディーゼルエンジンが2基搭載され、電力はCaterpillar 3304Tディーゼル発電機2基で供給されます。船体は強度が高い鋼鉄製、上部構造と主要甲板はアルミニウム製です。

最大持続速度は29.5ノット（約54.6km/h）で、航続距離は5,360km、5日間の航続が可能です。衛星航法システム、衝突回避システム、水上レーダー、Loran Cシステムを搭載し、乗員は士官2名と乗組員14名の合計16名です。アイランド型カッターは、ヴォスパー・ソーニクロフトの33メートル級巡視船を基に設計されています。

アメリカ沿岸警備隊時代には、25mm機関砲1基、7.62mm M60軽機関銃2丁を装備し、ブローニングM2重機関銃2丁の搭載も可能でした。ウクライナ海軍では、ソ連製の110-PM機関砲1基を装備していました。

アメリカ沿岸警備隊時代の活動

クッシングは、1988年8月4日に就役し、メイン州ポートランド沖のクッシング島にちなんで命名されました。沿岸警備隊時代には、捜索救助、法執行、海洋資源保護、麻薬密輸や不法移民阻止など、メキシコ湾、カリブ海、大西洋で様々な任務に従事しました。特に、1991年のハイチ軍事クーデター後の「民主主義擁護作戦」や、1994年の「エイブル・マナー作戦」と「エイブル・ビジル作戦」では、6万3000人以上のハイチとキューバからの移民の救助と本国送還に貢献しました。これは、ベトナム戦争以来、アメリカ沿岸警備隊にとって最大規模の作戦でした。その後、クッシングはノースカロライナ州に移り、漁業監視と捜索救助に重点を置いた活動を行いました。

クッシングは2017年3月8日に退役し、後継として2隻のセンチネル型カッターが配備されることになり、メリーランド州ボルチモア付近の沿岸警備隊造船所に係留されました。

ウクライナ海軍への譲渡とその後

2018年9月、アメリカの過剰防衛物品プログラムに基づき、クッシングとその姉妹艦ドラモンドはウクライナに供与されました。ウクライナ海軍は、ソビエト黒海艦隊の解体に伴い、旧ソ連艦艇を引き継いでいましたが、アメリカ製の主要な就役艦艇を運用するのはこれが初めてでした。両艦は、メンテナンスと改修を受けた後、2019年10月21日に黒海のオデッサ港に到着しました。クッシングは、船乗りのローマン・ナプリアギラとセルギイ・マイボロダの故郷を記念して「スラヴャンスク」と改名されました。

沈没

2022年3月3日、ロシアによるウクライナ侵攻の際、スラヴャンスクはオデッサ、チョルノモルスク、ユジネ周辺で偵察と哨戒任務中に、ロシアのKh-31対艦ミサイルの攻撃を受けて沈没しました。乗員の安否は不明です。

スラヴャンスクは、アメリカ沿岸警備隊時代からウクライナ海軍時代まで、様々な任務に従事し、その歴史を終えました。

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