スリマ・ストラヴィンスキー

スヴャトスラフ・スリマ・ストラヴィンスキー

スヴャトスラフ・スリマ・ストラヴィンスキー（Sviatoslav Soulima Stravinsky, 1910年9月23日 - 1994年11月28日）は、20世紀を代表する作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの次男として知られる、スイス生まれのロシア系音楽家です。彼は作曲、ピアノ演奏、音楽教育と多岐にわたる分野で活動しました。彼の「スリマ」という名前は、ストラヴィンスキー家が歴史的に使用していた「スリマ＝ストラヴィンスキ」という複合姓に由来しています。

生い立ちと初期の教育

スリマは、父イーゴリが革新的なバレエ音楽「火の鳥」を発表した年と同じ1910年に、スイスのローザンヌで生を受けました。音楽家の家系に生まれた彼は、幼少期から音楽に親しみ、後に高名な師事を受けます。ピアノは、当時のフランス音楽界を代表するピアニストの一人、イシドール・フィリップに師事し、その卓越した技術と音楽性を学びました。作曲は、多くの著名な作曲家や音楽家を育成した伝説的な音楽教師、ナディア・ブーランジェに師事し、厳格かつ論理的な作曲技法を習得しました。

パリでの活動と渡米

音楽家としてのキャリアは、1934年にフランスのパリで本格的にスタートしました。ピアニストとしてデビューした彼は、特に父イーゴリ・ストラヴィンスキーのピアノ作品の演奏に力を入れました。父子で共に演奏会を開催したり、録音を残したりするなど、この時期は父との緊密な連携が見られます。しかし、第二次世界大戦が勃発し、ヨーロッパの状況が緊迫すると変化が生じます。1939年に父イーゴリがアメリカへの亡命を選択した後も、スリマはフランスに留まることを選び、フランス陸軍に所属して戦時下の困難な時期を過ごしました。戦後の1946年には、フランソワーズ・ボンと結婚しています。

戦後しばらく経った1948年、父イーゴリからの招きに応じる形で、スリマは家族と共にアメリカ合衆国へと移住しました。これ以降、彼の音楽活動の拠点はアメリカへと移ります。しかし、アメリカでの生活が始まると、父子の関係に新たな問題が生じました。その主な原因は、父イーゴリの二番目の妻であるヴェラ・スーデイキナとの関係性でした。スリマを含むイーゴリの子供たちは、ヴェラとの間に感情的な隔たりがあり、これが父と子供たちの間に深い溝を生じさせ、対立へと発展していったと言われています。

教育者としての貢献と作品

アメリカに定住した後、スリマは教育者としても重要な足跡を残しました。1950年から1978年までの約30年間、イリノイ州アーバナにあるイリノイ大学のピアノ科で教授を務め、多くの若い音楽家を育成することに貢献しました。

作曲家としては、主にピアノのための作品を中心に創作活動を行いました。彼の作品の大部分は、父イーゴリが1971年に死去した後になってから、ようやく楽譜として出版される機会を得ました。作品には、演奏会で演奏されることを想定した楽曲だけでなく、音楽教育に用いられることを目的とした曲も含まれています。しかしながら、父イーゴリ・ストラヴィンスキーというあまりにも偉大で圧倒的な存在感を持つ作曲家の息子であったため、作曲家スリマ・ストラヴィンスキー自身の作品や評価は、残念ながら父の巨大な名声の陰に隠れてしまいがちでした。

また、彼は自身の作曲・演奏活動の傍ら、音楽に関する著作も手がけています。管弦楽法やオーケストラに関する著述を残しており、音楽理論や実践に関する彼の知見を示しています。ピアニストとしては、自身の演奏活動に加え、特に父イーゴリがピアノのために作曲した重要な作品群を録音として残し、後世に伝えるという貢献も果たしています。

晩年と遺産問題

父イーゴリの死後、スリマは兄や妹、そして姉の娘と共に、父の後妻ヴェラとの間で、イーゴリの莫大な遺産を巡る法的な争いに巻き込まれました。この遺産訴訟は8年という長い期間に及び、家族間の関係にさらなる複雑さをもたらしました。

スヴャトスラフ・スリマ・ストラヴィンスキーは、晩年をアメリカで過ごし、1994年11月28日にフロリダ州サラソタでその生涯を閉じました。享年84歳でした。

家族

彼の家族は著名な音楽家一家です。父は20世紀最大の作曲家の一人であるイーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー、祖父はロシア帝室マリインスキー劇場のバス歌手として活躍した声楽家であり俳優でもあったフョードル・ストラヴィンスキーです。

もう一度検索