スレドニ・ストグ文化

スレドニ・ストグ文化：ウクライナと南ロシアの銅器時代文化

スレドニ・ストグ文化は、紀元前4500年から紀元前3500年頃、ウクライナと南ロシアの肥沃なドニプロ川中流域からドン川下流域にかけて栄えた銅器時代の文化です。現在までに約100ヶ所の遺跡が発見されており、その広がりと特徴から、古代ヨーロッパ社会の理解に重要な役割を果たす文化として注目を集めています。

生活と社会

スレドニ・ストグ文化の遺跡は、小さな村落を示しており、住居は半地下式または地上式で、規模は比較的小さかったようです。人々は、牛、羊、ヤギ、豚、犬などの家畜を飼育し、狩猟も盛んに行っていました。狩猟の対象は、アカシカ、ノロジカ、イノシシ、ヘラジカなどの大型動物から、カワウソ、オオカミ、キツネ、ビーバーといった小型動物まで多岐に渡ります。さらに、オナガー（野ロバ）の狩猟も行われていた痕跡も発見されています。また、川を利用した漁労も重要な生業だったと考えられます。

特に注目すべきは、馬の骨と馬具と思われる遺物が大量に発見されている点です。これは、この文化が人類による馬の家畜化の起源に深く関わっている可能性を示唆しており、現在も活発な研究が行われています。

彼らの技術は、高度ではありませんでしたが、生活を支えるための十分なものでした。尖底土器は外殻を強化加工し、石英製のナイフや、鹿の角から作られたつるはし、槌、戦斧などが使用されていました。砥石や石臼などの道具も発見されており、これらの遺物から、彼らの生活様式や技術レベルを推測することができます。

農業も営んでおり、エマー小麦、大麦、キビ、エンドウマメなどを栽培していたと考えられます。しかし、農業は副次的なものであり、狩猟や牧畜が中心的な生業だったと推測されます。

埋葬と文化

スレドニ・ストグ文化の人々は、小規模な集団墓地に土葬を行いました。一つの墓穴に複数の遺体が埋葬されている例も見られます。遺体は膝を立てた状態で仰向けに寝かされ、黄土が掛けられていました。一部の墓からは副葬品も発見されており、死生観や社会構造を知る手がかりとなっています。

文化的な地域差も指摘されており、一様な文化ではなく、少なくとも4つの地方文化から構成されていたとする見解もあります。この地域差は、後の文化発展にどのような影響を与えたのか、さらなる研究が必要です。

他文化との関係

スレドニ・ストグ文化は、同時代の他の文化とも密接に関わっていました。西方のトリポリエ文化との接触があったことは明らかであり、東方のクヴァリンスク文化とは遺物、経済、葬法などに共通点が見られ、強い関連性があったと考えられています。さらに、これらの文化はヤムナ文化の形成に重要な役割を果たしたと推測されています。

インド・ヨーロッパ語族との関連

インド・ヨーロッパ語族の起源に関するクルガン仮説では、スレドニ・ストグ文化の拡大過程が、インド・ヨーロッパ語族話者のヨーロッパ南東部への初期の移動を示すものとして捉えられています。この仮説は現在も議論の的となっていますが、スレドニ・ストグ文化の研究は、インド・ヨーロッパ語族の起源解明に重要な貢献をする可能性を秘めています。

今後の研究

スレドニ・ストグ文化は、多くの謎を残したまま、研究が進められています。今後の発掘調査や分析によって、彼らの生活、社会、文化、そしてインド・ヨーロッパ語族との関係について、より詳細な理解が得られることが期待されます。

もう一度検索