スロバキア人民党

スロバキア人民党（Slovenská ľudová strana, SĽS）は、かつてスロバキアに存在したカトリック系の政党です。スロバキア民族の自決権と、カトリックの教義に基づく教権主義を主張していました。

党名は、1925年以降、指導者アンドレイ・フリンカの名を冠してフリンカ・スロバキア人民党（Hlinkova slovenská ľudová strana, HSĽS）と改称されました。さらに1938年には、スロバキア国民党などと合同し、フリンカ・スロバキア人民党＝スロバキア国民統一党（Hlinkova slovenská ľudová strana – Strana slovenskej národnej jednoty, HSĽS-SSNJ）へと変遷しました。

ハプスブルク帝国時代

1905年12月14日、ハプスブルク帝国内で、スロバキア民族の利益を代表する唯一の民族政党であったスロバキア国民党から、カトリック系がジリナで離脱し、人民党の創設を宣言しました。1906年3月18日に正式に発足したものの、1913年まではスロバキア国民党の一派としてハンガリー議会選挙に参加し、1906年の選挙では6議席を獲得しました。しかし、チェコ人との協調を進める国民党主流派の姿勢に反発し、1913年7月29日に分党し、正式に結党しました。
第一次世界大戦中、ハプスブルク帝国に反対するような目立った活動は控えましたが、1918年にはスロバキア国民会議の結成に加わりました。

チェコスロバキア時代

チェコスロバキア建国後、ピッツバーグ協定で合意されたスロバキアの自治を要求し、プラハ政府の中央集権的な姿勢を批判しました。1920年の選挙では、同じカトリック政党であるチェコスロバキア人民党と合同会派を組み、33議席を獲得しました（うち12議席がスロバキア人民党）。1925年の選挙ではスロバキア地域で35.4％の得票を得て23議席を獲得し、1927年にはアントニーン・シュヴェフラ第3次政権に閣僚を2名送り込み、与党の一員となりました。しかし、党幹部で陰謀罪に問われたヴォイテフ・トゥカの有罪判決を受け、人民党の閣僚は辞任しました。1929年の選挙で19議席を獲得しましたが、連立政権には参加せず、野党の立場を維持しました。

1933年8月、ニトラで行われた千百年祭において、支持者を動員し、ヤン・マリペトル首相ら政府代表団の演説を妨害した上で、フリンカ党首がスロバキアの自治を要求する事件が発生しました（ニトラ事件）。またこの時期から、国民連盟や国民ファシスト共同体などの急進右翼勢力との協力関係を深めました。1935年の選挙ではスロバキア国民党と自治ブロックを結成し、22議席を獲得しました。マリペトル政権およびミラン・ホジャ政権は、人民党との連立交渉を行い、スロバキア支持の獲得を試みましたが、政権参加には至りませんでした。

1938年8月、長年にわたり党を率いてきたフリンカが死去し、ヨゼフ・ティソが新党首に就任しました。ミュンヘン会談後、スロバキア地域にはティソを首相とする自治政府が樹立されました。11月、第一次ウィーン裁定によりハンガリーへの領土割譲が決定した後、共産党や社民党を除くスロバキア系政党を糾合し、フリンカ・スロバキア人民党＝スロバキア国民統一党が結成されました。12月の選挙では97％の圧倒的な支持を得て、事実上の一党支配体制を確立しました。

スロバキア共和国時代 (1939年-1945年)

1939年3月、ナチス・ドイツによってチェコスロバキアが解体され、スロバキアが独立国家となると、ティソが初代大統領に就任しました。
ソ連軍による解放を経て、チェコスロバキアが再建された後、人民党は活動を停止し、ティソをはじめとする多くの指導者は対独協力の罪で裁判にかけられました。

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