スローン・デジタル・スカイサーベイ

Sloan Digital Sky Survey (SDSS): 宇宙の3次元地図を描く壮大なプロジェクト

Sloan Digital Sky Survey (SDSS) は、宇宙の大規模構造を解明することを目的とした、世界規模の天文観測プロジェクトです。専用の望遠鏡を用いて、全天の25%以上に及ぶ広大な領域を精密に観測し、銀河やクェーサーなどの天体の位置、明るさ、距離を測定することで、かつてないほど詳細な宇宙地図の作成を目指しています。このプロジェクトは、アルフレッド・P・スローン財団から多大な資金援助を受けており、その名にちなんで命名されました。

プロジェクトの目的と概要

SDSS の初期目標は、1億個もの天体の位置と明るさを測定し、そのうち10万個については分光観測を行うことで、赤方偏移から距離を決定することでした。これにより、宇宙の大規模構造である銀河の広範囲かつ精密な分布を明らかにすることが期待されました。

1998年に観測用の望遠鏡とCCDカメラが、1999年には分光装置が完成し、観測が開始されました。およそ5年間の観測期間を経て、2005年には初期目標が達成され、全天の25%における天体探査が完了しました。その結果、約2億個もの天体のデータが取得され、これまでにないほど詳細な宇宙の3次元地図が作成されました。

初期目標達成後には、SDSS-II と呼ばれる第2段階のプロジェクトが開始されました。SDSS-II では、銀河系の進化の解明、より広範囲の観測、そして宇宙膨張の研究という3つの主要なプログラムが実施されました。具体的には、SEGUE (Sloan Extension for Galactic Understanding and Exploration) では銀河系内の星を観測し、Sloan Legacy Survey ではより広範囲の観測を行い、SDSS Supernova Survey では遠方銀河のIa型超新星を観測することで宇宙膨張の研究を進めました。SDSS-II には、当初のアメリカ合衆国、日本、ドイツに加え、韓国、中国、スイスなど多くの国々の大学や研究所が参加し、国際協力体制がさらに強化されました。

驚異的な観測装置

SDSS プロジェクトの成功には、高度な観測装置の開発と運用が不可欠でした。

望遠鏡: アメリカ合衆国ニューメキシコ州のアパッチポイント天文台に設置された口径2.5メートルの反射望遠鏡は、非常に広い視野を持つように設計されています。満月約30個分に相当する広大な領域を一度に撮影できるため、効率的な観測を可能にしています。大気の揺らぎの影響を最小限に抑えるため、一般的な天文台のようなドームは持たず、観測時には格納庫から完全に引き出された状態で運用されています。

CCD カメラ: 東京大学宇宙線研究所のグループが開発した大規模なCCD カメラは、4メガピクセルのCCD を30個も搭載し、5色のフィルターを用いて同時に5色の画像を撮影できます。この高性能なカメラは、膨大な量の天体データを高精度で取得するために不可欠な役割を果たしました。

分光装置: SDSS では、多天体分光装置と呼ばれる独自の装置を用いて効率的な分光観測を行っています。事前に撮影した天体画像に基づいて穴の開いたアルミ板を作成し、その穴に光ファイバーを通して天体からの光を分光器に導くことで、一度に640個もの天体の分光データを取得できます。視野を変えるごとに異なるアルミ板を用いることで、多数の天体の分光観測を効率的に行っています。

SDSS の遺産

SDSS は、宇宙に関する私たちの理解を飛躍的に進歩させることに貢献しました。膨大な量の天体データは、宇宙の大規模構造、銀河の進化、宇宙膨張の研究など、幅広い分野における研究に利用されており、今後も多くの発見をもたらすことが期待されています。SDSS は、単なる観測プロジェクトにとどまらず、国際協力による科学研究の成功例としても高く評価されています。

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