スーゴ・アッラ・ジェノヴェーゼ

スーゴ・アッラ・ジェノヴェーゼ：ナポリを代表する牛肉と玉ねぎのソース

「スーゴ・アッラ・ジェノヴェーゼ」は、イタリア、ナポリの伝統的な肉ソースです。名前からジェノヴァの料理を想像するかもしれませんが、実際はナポリで生まれた郷土料理であり、ジェノヴァを含むイタリアの他の地域ではあまり知られていません。

このソースは、牛肉と大量の玉ねぎを長時間煮込むことで、深いコクと甘みを引き出した、濃厚な味わいが特徴です。 玉ねぎは、ニンジンやセロリと一緒に炒められ、時間をかけてじっくりと甘みを引き出します。この丁寧に炒めた玉ねぎが、ソースの風味の基盤となるのです。白ワインやだしを加えることで、さらに奥行きのある味わいに仕上がります。

歴史：ジェノヴァとの意外な関係性

「ジェノヴェーゼ」という名前の由来は諸説あります。15～16世紀にナポリで普及したことから、ジェノヴァとナポリがイタリア半島で重要な貿易港であった時代に、ジェノヴァの商人や移民によって伝えられたという説が有力です。一方、ジェノヴェーゼがカンパニア地方の一般的な名字であることから、考案者に由来する可能性も示唆されています。

興味深いことに、このソースの玉ねぎの使用方法はフランス料理の影響を受けていると考えられています。フランスの伝統料理であるブフ・ア・ラ・モード（牛肉の煮込み料理）を彷彿とさせる調理法は、イタリア料理とフランス料理の文化交流を物語っています。19世紀中頃には、パリの高級レストランでも「ジェノヴェーゼソース」を使った料理が提供されていたという記録も残っています。

調理方法：時間と手間をかけてつくる深い味わい

スーゴ・アッラ・ジェノヴェーゼの調理は、時間と手間をかけた、まさに熟練の技が光る工程です。牛肉と玉ねぎを2時間から場合によっては10時間もの間、じっくりと炒めます。この時間をかけることで、玉ねぎの甘みと牛肉の旨みが最大限に引き出され、ソースの深みが増していきます。

仕上げには、白ワインやだしを加え、さらに風味を豊かにします。このソースによく合うパスタは、リガトーニ、ズィティ、カンデーレなど、大きな穴の空いたパスタです。ソースがパスタの穴の中にしっかりと絡み、濃厚な味わいを存分に楽しむことができます。

調理例としては、ソースと和えたパスタに、牛肉を添え、トマトを付け合わせ、仕上げにペコリーノチーズをかけます。

ジェノヴェーゼ：日本とイタリアの認識の違い

日本で「ジェノヴェーゼ」といえば、バジルを使った緑色のペスト・ジェノヴェーゼを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、イタリア、特にナポリでは、茶色い玉ねぎと肉のソースを指します。

この違いは、それぞれの国における料理文化や、情報の伝達方法の違いから生じていると考えられます。日本に伝わったジェノヴェーゼの情報が、ペスト・ジェノヴェーゼに偏っていた可能性もあるでしょう。

Pasta alla genovese (茶色のパスタ)
Pasta al pesto genovese (緑色のパスタ)

このように、スーゴ・アッラ・ジェノヴェーゼは、名前の由来や調理法、そしてその認識において、多くの興味深い要素を含んでいます。 ナポリの豊かな食文化を象徴する、奥深い味わいのソースです。

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