スーザフォン

スーザフォン

スーザフォンは、アメリカの作曲家ジョン・フィリップ・スーザによって考案された、大型のバルブ式低音金管楽器です。スーザホン、スーザホーン、スーザフォーンとも呼ばれます。

歴史

スーザフォンは、ジョン・フィリップ・スーザが1893年にジェームズ・ウェールズ・ペッパーに依頼して製作されました。当時、スーザが率いるバンドがパレードで使用するための、演奏しやすく、かつ聴衆に迫力のあるサウンドを届けられる楽器が求められていました。

特徴

スーザフォンの最大の特徴は、立奏を前提とした設計です。演奏者を中心として管が大きく円形に巻かれ、大きく開いた朝顔（ベル）は演奏者の後方から立ち上がり、ほぼ前方または上方を向きます。この形状により、演奏者は楽器を袈裟懸け状に一方の肩に乗せて演奏することができます。

調性とバルブ

ほとんどのスーザフォンは変ロ（B♭）調で、ピストン式の3本のバルブを備えています。ただし、ごく稀に変ホ（E♭）調やハ（C）調のもの、そして4バルブのスーザフォンも存在します。

ヘリコンとの比較

スーザフォンは、米海兵隊バンドなどで使われていたヘリコンと呼ばれるチューバ/低音サクソルンから改良されたものです。ヘリコンの朝顔が小さく上向きで固定されているのに対し、スーザフォンでは朝顔が大きく前方ないしは上方に開き、向きを変えることができます。また、朝顔部は収納および運搬の便宜のために取り外すことも可能です。ヘリコンにはロータリー・バルブのものも存在しましたが、スーザフォンでこれが採用されることはまずありません。

素材

演奏者の体力負担を軽減するため、1960年代以降、重量のかさむ真鍮に代えて、より安価かつ軽量な繊維強化プラスチックで楽器本体を製作することが多くなりました。また、朝顔部にはABS樹脂を用いることもあります。樹脂製の管体は真鍮製のものに比べ音色で劣りますが、スーザフォンが求められる状況においては受容可能な範囲内とされています。

演奏

スーザフォンは、パレードやマーチングといった行進のほか、デキシーランド・ジャズなどで好んで用いられます。動きのある野外演奏を大前提として考案された楽器なので、立奏用のチューバと比べ楽器の保持が容易で長時間の演奏に適しており、トランペットやクラリネットなどの小型の楽器とともに俊敏な動作も可能です。

スーザフォンの大きく前を向いて開いた朝顔に、団体の名称や絵などを描き入れた薄い布を強く張って使うこともよくあります。隊列の後方から放たれる重低音とともに、巨大な姿による圧倒的な存在感を観衆に示すことができます。

関連項目

* チューバ

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