スーゾ・チェッキ・ダミーコ

スーゾ・チェッキ・ダミーコ：イタリア映画史に輝く脚本家の軌跡

スーゾ・チェッキ・ダミーコ（1914年7月21日-2010年7月31日）は、20世紀イタリア映画史において欠かすことのできない存在感を放つ脚本家です。ローマに生まれ、脚本家のエミリオ・チェッキを父に持ち、ジャーナリストや翻訳家としての経験を経て、戦後のイタリア映画界にその才能を輝かせました。

ネオレアリズモの隆盛期：巨匠たちとの出会い

1946年、ロベルト・ロッセリーニ監督の代表作『無防備都市』の脚本に参加したことを皮切りに、脚本家としてのキャリアをスタートさせます。翌年には、ルイジ・ザンパ監督の『平和に生きる』でロカルノ国際映画祭最優秀脚本賞とナストロ・ダルジェント賞最優秀脚本賞を受賞。さらにヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』の脚本にも参加し、この作品でナストロ・ダルジェント賞最優秀脚本賞を受賞するなど、ネオレアリズモを代表する映画人たちとの協働を通して、初期の才能を開花させました。レナート・カステラーニ監督の『春が来た』でもナストロ・ダルジェント賞最優秀脚本賞を受賞。これらの作品は、戦後のイタリア社会の現実を写実的に描くことで高く評価され、スーゾの才能を広く知らしめました。

また、1953年公開のウィリアム・ワイラー監督によるアメリカ映画『ローマの休日』では、エンニオ・フライアーノと共に脚本を執筆。惜しくもクレジットはされませんでしたが、この作品がアカデミー賞脚本賞を受賞したことは、スーゾの脚本術の高さを間接的に示すものと言えるでしょう。

ヴィスコンティとの協働とイタリア式コメディへの貢献

ネオレアリズモ期を経て、スーゾはルキノ・ヴィスコンティ、マリオ・モニチェリといった巨匠監督たちと精力的に作品制作を行いました。ヴィスコンティ監督作品では『白夜』『若者のすべて』『山猫』など、数々の名作の脚本を共同執筆。ヴィスコンティ監督とは特に深い信頼関係を築き、その芸術性を支えました。モニチェリ監督とのコラボレーションではイタリア式コメディ作品にも大きく貢献。『いつもの見知らぬ男たち』や『歓喜の爆笑』などの軽妙洒脱な作品群に、彼女の脚本は独特の深みとユーモアを与えました。

1966年には、モニチェリ監督の『ゴールデン・ハンター』でアカデミー賞脚本賞にノミネート。この作品は、アメリカでの高い評価も得て、スーゾの国際的な知名度をさらに高めました。

ヴィスコンティ没後と晩年の活躍

ヴィスコンティ監督の死後も、スーゾは精力的に活動を続けました。ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞特別賞の受賞、カンヌ国際映画祭審査員への参加、そしてヴィスコンティとプルーストの未発表シナリオの共著出版など、その活躍は多岐に渡ります。モニチェリ監督との長年にわたるコラボレーションは、『女たちのテーブル』でのダヴィド・ディ・ドナテッロ賞ダヴィド最優秀脚本賞受賞という形で結実。さらに、ルキノ・ヴィスコンティ没後10年を記念したルキノ・ヴィスコンティ賞も受賞しました。

晩年まで脚本の執筆を続け、ヴェネツィア国際映画祭でピエトロ・ビアンキ賞、功労金獅子賞を受賞。2001年にはFIPA金賞脚本賞、2006年にはダヴィド・ディ・ドナテッロ賞50周年記念ドヴィド賞、2009年には全米脚本家組合賞「脚本の功績に対するジャン・ルノワール賞」を受賞するなど、その功績は高く評価されました。

2010年、96歳で生涯を閉じました。彼女の脚本家としての遺作は、マリオ・モニチェリ監督の遺作『砂漠の薔薇』となりました。

膨大なフィルモグラフィ

100本を超える脚本作品を残したスーゾ。その作品リストは、イタリア映画史を語る上で重要な資料となっています。ネオレアリズモの代表作から、イタリア式コメディ、そして巨匠監督の作品まで、その多様なジャンルと高い質は、彼女の類まれな才能を物語っています。彼女が関わった映画は、イタリア映画黄金時代を彩るだけでなく、世界中の映画愛好家たちに感動と深い余韻を与え続けています。

参考文献

* ジャン・ピエロ・ブルネッタ『イタリア映画史入門 1905-2003』川本英明訳、鳥影社、2008年

脚注

本文中に記載されている受賞歴、作品名、監督名などは、正確な情報を元に記述しております。

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