スーパースコープ (映画)

スーパースコープ：ハリウッド黄金期を彩ったワイドスクリーン方式

1950年代、アメリカで誕生したスーパースコープは、ワイドスクリーン映画の撮影方式の一つとして、映画史にその名を刻みました。ユダヤ系アメリカ人のタシンスキー兄弟が考案したこの方式は、当初のアスペクト比2:1から、後に2.35:1の「スーパースコープ235」へと進化しました。RKO Picturesなどのハリウッドメジャースタジオで採用され、「RKOスコープ」とも呼ばれ、黄金期を支える技術として注目を集めました。

スーパースコープ方式の特徴と技術

スーパースコープ方式は、通常の35mmカメラとレンズを使用する点が大きな特徴です。そのため、製作側は既存の機材を流用でき、撮影手法の自由度も高く保てました。さらに、一つの撮影素材からスコープサイズ（ワイドスクリーン）とスタンダードサイズ（4:3）の両方の映像が得られるという、経済的なメリットも備えていました。シネマスコープ方式と比較すると、画面両端の歪みが少ないことも、この方式の利点として挙げられます。

しかし、スーパースコープ方式はネガフィルムの上下をトリミングしてワイド画面を作るため、記録面積が実質的に狭くなり、画質の劣化が避けられないという欠点がありました。また、常に縦方向に余裕を持った構図での撮影が必要となるため、撮影の制約も生じました。これらの欠点に加え、1957年のRKO Pictures倒産なども影響し、ワイドスクリーン規格としては比較的短い期間でその役割を終えました。

日本では、東映がワイド映画配給を見据えてスーパースコープ方式を採用し、数本の作品を製作しました。その後、スーパースコープ235を改良した「スーパー35」方式が1980～90年代、ビデオ鑑賞が普及した時代において多くの映画作品で使用されるようになりました。

スーパースコープ社：日本の音響・映像産業への貢献

スーパースコープ方式の開発元であるスーパースコープ社は、日本の音響・映像機器産業の発展にも大きく貢献しました。1957年、タシンスキー兄弟は東映へのシステム納入を機に来日。そこで目にした東京通信工業（現ソニー）製のテープレコーダーに感銘を受け、アメリカでの販売代理店契約を結びました。当時の外貨規制という状況下で、スーパースコープの代金決済に工夫を凝らしたとも伝えられています。その後、1970年代前半まで、ソニー製品のアメリカでの販売代理店として活躍しました。

1964年には、マランツ・カンパニーを買収。真空管アンプで知られるマランツを、トランジスタアンプ市場にも進出させ、企業規模を拡大させました。低価格レシーバー市場への進出も目指し、日本のメーカーに開発を依頼、スタンダード工業（後の日本マランツ）の試作機を採用した製品を発売しました。この買収と製品展開により、マランツはハイエンド少量生産から世界規模の総合音響メーカーへと変貌を遂げました。1975年にはスタンダード工業が日本マランツと商号変更し、SUPERSCOPEブランドの製品展開が始まりました。しかし、1980年代に入ると、拡大路線の裏目から資金難に陥り、フィリップス社に海外事業を売却。1987年にはダイナスキャン社に買収され、タシンスキー兄弟は会社を去ることになりました。現在もスーパースコープ・テクノロジーズ社として存続し、楽器練習用CDプレーヤーなどの開発・販売を行っています。日本市場では株式会社CSRがライセンス生産・販売を担当しています。

まとめ

スーパースコープは、技術革新と企業戦略によってハリウッド黄金期に彩りを添え、日本の音響機器産業にも大きな影響を与えた、重要な存在でした。その技術的特徴や歴史的背景を理解することで、映画史や音響機器の歴史をより深く理解することができるでしょう。

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