シネマスコープ

シネマスコープとは

シネマスコープ（CinemaScope）は、映画撮影で用いられているワイドスクリーン技術の一つです。この技術は、アナモルフィックレンズを使用して、横縦比2.35:1（12:5）の画面アスペクト比を実現しています。しばしば「シネスコ」と略されることもあります。

シネマスコープの歴史

1950年代初頭、映画業界はテレビの普及に大きな危機感を抱いていました。アナモルフィックレンズ自体は1920年代にフランスのアンリ・クレティアンによって初めて発明されましたが、この技術が商業的に利用されるようになったのは、1953年にカナダのボシュロム社と20世紀フォックス社が改良を加えた時です。この改良により、これまでの一般的な画面アスペクト比1.37:1（スタンダードサイズ）のほぼ2倍の横幅を持つ映像が可能となりました。

シネマスコープは20世紀フォックス社が商標名として使用したもので、他にも様々なワイドスクリーン技術が存在していましたが、シネマスコープは特に有名です。1953年9月には、ハリウッドで初めてのシネマスコープ作品である『聖衣』が公開され、これによりシネマスコープの名は一躍広まりました。1954年にはボシュロム社がアカデミー賞を受賞し、更に技術が評価されることとなります。

日本では、1957年に東映が初のシネマスコープ映画『鳳城の花嫁』を公開し、その後東映の作品群は「東映スコープ」として広く知られるようになりました。このように、シネマスコープは映画制作において重要な役割を担っていましたが、テレビ放送においては、可読性を向上させるために画面を圧縮するという課題も発生しました。特にオープニングやエンディングなどで、映像が縦長に表示されることがありました。

技術の進歩に伴い、シネマスコープ技術は徐々に衰退しましたが、2.35:1のアスペクト比は今でも使われ続けています。現在では、より一般的な画面アスペクト比は横縦比1.66:1のビスタサイズです。

アニメーション作品におけるシネマスコープ

シネマスコープ技術はアニメーション作品にも影響を与えています。例えば、スタンダードサイズで制作されたテレビアニメが劇場版として公開される際、必ずしもそのままの映像が利用されるわけではありません。映像比率の調整が必要で、しばしば上下をカットしてシネマスコープ用に修正されるケースがあります。

東宝チャンピオンまつりで上映された『巨人の星』の劇場版では、元のテレビ版の上下をカットしシネスコ化されました。また、カットされた部分の修正により、アニメの演出方法に変化も見られました。一方で、同じ東宝の『アタックNo.1』の場合、劇場版化する際に更に左右をカットされてしまい、映像の中央部分だけが残るという状況も発生しました。これによって、試合の場面でボールや指先しか映らないこともあり、小黒祐一郎はその妙な演出を振り返って語っています。

また、シネマスコープはテレビアニメでも利用されることがあり、特に『アークナイツ【黎明前奏／PRELUDE TO DAWN】』のような作品では、映画的な演出として採用されています。これにより、アニメでも視覚的にインパクトのある演出が可能となっています。

結論

シネマスコープは、映画やアニメーション様々な分野において、視覚的表現を豊かにする技術として重要な役割を果たしてきました。その影響は今もなお続いており、さまざまな映像表現においてそのスタイルを感じることができます。

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