スーパー・ジャイアンツ

『スーパー・ジャイアンツ』（ブラインド・フェイス）

ブラインド・フェイスによるセルフタイトルのデビューアルバムは、本国イギリスやヨーロッパではポリドール・レコードから、アメリカではアトランティック・レコードから1969年に発表されました。日本では『スーパー・ジャイアンツ』という、原題の「Blind Faith」とは全く異なる邦題が付けられています。このアルバムは商業的に大成功を収め、イギリス、カナダ、アメリカでチャートの頂点に立ち、RIAAからはプラチナディスクに認定されるなど、当時のイギリスのロックバンドとしては画期的な業績となりました。また、ソウルアルバム・チャートでも40位にランクインしています。リリース後、ローリング・ストーン誌の1969年9月6日号には、エド・ライムバッハー、レスター・バングズ、ジョン・モースランドによるレビューが掲載されました。

結成と制作背景

ブラインド・フェイスは、人気を博したパワートリオ、クリームのメンバーであったドラマーのジンジャー・ベイカーとギタリストのエリック・クラプトンに、イギリスで既にスターの地位を確立していたマルチプレイヤー、スティーヴ・ウィンウッドが加わる形で結成されました。この顔合わせは、当時の音楽シーンにおいて大きな話題を呼び、「スーパーグループ」として注目を集めました。ウィンウッドは北米においては他の二人ほどの知名度はまだありませんでしたが、その才能は高く評価されていました。

アルバム制作は1969年の初頭から曲作りが始まり、2月から3月にかけてロンドンのモーガン・スタジオでベーシックなトラックの録音が行われました。しかし、録音作業は順調には進まず、多くの楽曲が形を成したのは、4月から5月にかけてプロデューサーのジミー・ミラーの指揮のもと、オリンピック・スタジオで作業が進められてからです。元々クラプトンはウィンウッドとのソロアルバムを構想していましたが、自然な流れでバンドとしての活動へと移行していきました。メンバーはアルバム制作やツアーに対して慎重な姿勢も見せましたが、プロモーターやレコード会社の強い後押しがあり、バンドとして歩みを進めることになります。

録音の進行とツアー

アルバムの録音作業は、スカンジナビアでのツアーによって一旦中断されます。その後、アメリカでの大規模なツアーが7月11日のニューポートから始まり、8月24日のハワイまで敢行されました。このツアーでは、フリー、テイスト、デラニー＆ボニーといった実力派バンドがサポートアクトを務めています。ツアー終了後、アルバムは急ピッチで仕上げられました。その慌ただしさはアルバムの構成にも表れており、B面にはわずか2曲しか収録されていません。そのうちの1曲「君の好きなように」は、約15分にも及ぶ長いジャムセッションでした。しかし、このような状況下でも、アルバムからはウィンウッド作の「マイ・ウェイ・ホーム」とクラプトン作の「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」という2曲がヒットしています。

議論を呼んだジャケットアート

本作のジャケット写真は、発表当時、大きな論争を巻き起こしました。銀色の宇宙船を手に持った、トップレスの少女の写真が使用されたためです。この宇宙船は男性器の象徴であると解釈され、物議を醸しました。そのため、アメリカ盤では急遽、バンドメンバーの集合写真に差し替えられてリリースされました。

このカバーアートを手掛けたのは、クラプトンの個人的な友人であり、かつてフラットを共有していたこともある写真家のボブ・サイデマンです。サイデマンは、ジャニス・ジョプリンやグレイトフル・デッドといったアーティストの写真でも知られていました。彼は1990年代半ばにアルバムジャケットのリトグラフを販売する際の広告で、このイメージの着想について説明しています。サイデマンによれば、創造性の達成と技術による表現を象徴する「宇宙船」と、その新しい「胞子」（音楽）を宇宙へ運ぶ「純潔」の運び手として少女を組み合わせたとのことです。彼は、少女をシェークスピアのジュリエットほどの年齢、すなわち少女から女性への過渡期にある「輝く純潔の希な揺らめく炎」として捉え、宇宙船を「知恵の木の実」、少女を「命の木の実」と表現しました。

モデル探しは難航したと言われています。サイデマンは当初、ロンドンの地下鉄で出会った14歳とされる少女に声をかけ、両親にも会ったものの、彼の求めるイメージに対しては年を取りすぎていると判断しました。最終的にモデルとして採用したのは、その少女の妹、マリオラ・ゲッシェンでした。彼女は当時11歳であったと伝えられています。マリオラは当初、報酬として馬を要求したそうですが、代わりに40ポンドが支払われました。

カバーそのものだけでなく、モデルに関する奇妙な噂も広まり、論争に拍車をかけました。例えば、少女がドラマーのジンジャー・ベイカーの娘であるとか、バンドのグルーピーで奴隷のように扱われていたといった全く根拠のない情報が囁かれました。しかし、サイデマンがこのアートワークに付けたタイトル「盲目的信仰」が、実はまだバンド名が決まっていなかったメンバーにインスピレーションを与え、「ブラインド・フェイス」というバンド名の由来となったという逸話が残されています。サイデマンは、クラプトンがアルバムカバーにはバンド名を印刷せず、代わりに包装紙に印刷することを決定したと述べています。これは、ローリング・ストーンズのデビューアルバムやビートルズの『ラバー・ソウル』、『リボルバー』、トラフィックの同名アルバムなど、過去にも見られたアートワーク重視の表現方法でした。

その後のリリース形態

本作が初めてCD化されたのは1986年のことです。このCDには、オリジナルの収録曲に加えて「エクスチェンジ・アンド・マート」「スペンディング・オール・マイ・デイズ」という2曲の未発表曲が追加されました。ただし、これらの楽曲はベーシストのリック・グレッチの未発表ソロアルバムのために録音されたものであり、ブラインド・フェイスの他のメンバーが参加したという明確な証拠はないとされています。

さらに、2001年1月9日には拡大版となるデラックス・エディションがリリースされました。このエディションには、未発表のジャムセッション音源が多数収録されたボーナスディスクが付属しました。ボーナスディスクに収められたジャムセッションには、リック・グレッチがバンドに加入する前の時期の録音も含まれているため、彼は参加していません。また、「スリーピング・イン・ザ・グラウンド」のエレクトリック・スタジオバージョンは、既にクラプトンの4枚組ボックスセット『アンソロジー』に収録されていました。一方で、ウィンウッドのボックスセット『The Finer Things』に収録されていた1969年のハイドパークでのライブ音源、「スリーピング・イン・ザ・グラウンド」とザ・ローリング・ストーンズのカバーである「アンダー・マイ・サム」は、このデラックス・エディションには収録されませんでした。

参加ミュージシャンとスタッフ

アルバムの主要な参加メンバーは以下の通りです。

スティーヴ・ウィンウッド - ボーカル、キーボード、ギター
エリック・クラプトン - ギター、ボーカル（「Do What You Like」）
リック・グレッチ - ベース、ヴァイオリン、ボーカル（「Do What You Like」）
ジンジャー・ベイカー - ドラムス、パーカッション、ボーカル（「Do What You Like」）

制作スタッフとしては、ジミー・ミラーがプロデューサーを務め、ジョージ・チキアンツ、キース・ハーウッド、アンディ・ジョンズ、アラン・オダフィーらがエンジニアとして参加しました。ミキシングはアンディ・ジョンズとジミー・ミラーが担当。カバーデザインと写真はスタンリー・ミラーとボブ・サイデマンによるものです。クリス・ブラックウェルとロバート・スティグウッドがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、その後のリイシュー盤にはビル・レヴェンソン、スーハ・ガー、ヴァータンなどが携わっています。

収録曲のクレジットには、ノーマン・ペティが「オール・ライト」の作者の一人として誤って表記されている箇所もありました。短い活動期間に終わったブラインド・フェイスですが、この唯一のアルバムは、当時のスーパーグループとしての期待と、制作を巡る混乱、そしてアートワークを巡る論争とともに、ロック史に名を刻む作品として語り継がれています。

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