ズームイン 暴行団地

ズームイン 暴行団地

1980年に公開された日活ロマンポルノシリーズの一作で、暴力的な描写を含むピンク映画に分類される。映画監督・黒沢直輔の記念すべき長編デビュー作としても知られている。

物語の概要

主人公は、競輪選手・功一の妻である冴子。夫が地方のレースに出場し不在の間、冴子はかつて恋人だったピアノ調律師の隆也と久々に会う約束をする。隆也の住む団地へと向かう途中、冴子は黒いトレンチコートを着た見知らぬ男に突如襲撃される。男はニードルを用いて冴子の抵抗力を奪い、そのまま彼女を陵辱する。心に深い傷を負った冴子だったが、朦朧とした意識の中で隆也の部屋へたどり着く。そこで繰り広げられる隆也との情熱的な再会により、彼女は受けた凄惨なショックから少しずつ回復していく。

主な出演者

• - 冴子：宮井えりな
• - 隆也：志賀圭二郎
• - 沙智：梓ようこ
• - まゆ子：大崎裕子
• - 女高生：山地美貴
• - 若い主婦：飯田紅子
• - 功一：松風敏勝
• - 圭吾：錆堂連
• - グラマーな女：高橋レイ
• - ジャングルジムの女：あららぎ裕子
• - オペラ歌手：片桐夕子
• - 影山英俊
• - 緑川せつ
• - 大谷木洋子
• - 森みどり

作品の背景と特色

本作は、1979年に公開され成功を収めた小原宏裕監督の『ズームアップ 暴行現場』に触発された企画とされており、同作の脚本を担当した桂千穂が本作の脚本も手掛けた。位置づけとしては非公式な続編と見なされている。
日活は、かつての大原スタジオ時代に制作された作品に比べて、本作では意図的に過激な暴力描写を抑える方針をとったとされている。しかし、一方で本作には非常にシュールな描写も含まれている。例えば、女性器から滴り落ちた液体が地面に着弾すると炎上するという幻想的なシーンは、観る者に強い印象を与える。このような奇妙な映像表現が、黒沢直輔監督のスタイルを、実験的かつ官能的な作風で知られる鈴木清順監督と比較する声を生む要因となった。
本作のタイトルに含まれる「ズームイン」や、関連作の「ズームアップ」は、その後の一連のシリーズ作品の先駆けとなった。具体的には、『ズームアップ ダーティマガジンの女』（1980年）、『ズームアップ 性犯罪報告』（1981年）、『ズームアップ ストリッパーのぞき見』（1982年）、『ズームアップ 卒業写真』（1984年）、『ズームアップ 特殊オナニー』（1986年）など、同傾向のタイトルを持つ多くの作品が制作された。

批評的評価

本作は公開当時、日本の批評家から特にその映像表現や写真の活用方法について高い評価を受けた。しかし、物語を構成する脚本に関しては、内容が「弱い」という否定的な意見も散見された。
海外の映画評価として、トーマスとミハラ・ヴァイサーが著した『日本映画百科事典：The Sex Films』では、4つ星中2.5星の評価を与えている。彼らは、ピンク映画の脚本は概して並みの出来であることが多いと指摘しつつも、本作においては黒沢直輔監督の優れた視覚的センスが脚本の不足を補っていると分析した。特に、監督が駆使する「色と影」の表現は、鈴木清順監督のエロティックな作品世界に類似していると評している。また、映画情報サイトのオールムービーでは、本作の主題が必ずしも全ての観客に適しているわけではないとしつつも、「日活スタジオが手掛けたピンク映画の中でも、最も異彩を放つ作品の一つ」として、そのユニークさを評価している。

公開とメディア化

『ズームイン 暴行団地』は、1980年3月15日に日本国内の劇場で封切られた。その後、長らくソフト化されていなかったが、2006年3月24日にジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンからリリースされた日活ロマンポルノシリーズのDVD第3弾の一部として、初めて家庭用ソフトとして入手可能となった。

もう一度検索