セイヨウナシ

セイヨウナシ（西洋梨）

セイヨウナシ（学名：Pyrus communis）は、バラ科ナシ属に属する植物で、主にヨーロッパを原産とし、通称洋なしとして知られています。この果実は、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、日本を含むさまざまな地域で幅広く栽培され、食用として楽しまれています。

特徴

セイヨウナシの形状は、和なしがほぼ球形なのに対し、洋なしは縦に長く、独特のびん型をしています。色は赤、黄色、緑とさまざまですが、日本でよく見かけるのは緑色の果実であり、追熟することで黄色に変わります。この果実の表面には「さび」と呼ばれる褐色の斑点が見られることがあり、これが外観の特徴の一つです。

熟したセイヨウナシは、芳醇で甘みがあり、滑らかな食感を持ち、和なしとは違ってしゃりしゃりした食感はありません。果実が収穫された直後は硬く、甘さが少ないため、追熟を促すことでその芳香と甘みが増します。一般的には、熟成させることでデンプンが糖に変わり、ペクチンのゲル化によって味と食感が向上します。

日本では、早生種のバートレットは8月下旬から9月初めに収穫され、食べ頃は9月中旬頃です。一方、多くの品種、特にラ・フランスは10月から11月にかけて収穫され、その食べ頃は11月から12月にかけてです。

歴史

セイヨウナシは小アジアから南東ヨーロッパが原産であり、古代ギリシャ時代から栽培されていました。ローマ時代には、多くの品種が登場し、60種以上が存在したと記録されています。しかし、ローマ帝国の衰退とともに、栽培品種は減少し、現在のように10種程度に絞られています。日本では明治時代初めに導入されたものの、気候的な問題で一部地域にしか定着しておらず、特に東北や信越地方で栽培されています。戦後の昭和時代に入ってから、食用として広く利用されるようになりました。

栽培品種

セイヨウナシには多くの品種が存在しており、レポートによれば最高2900とも言われてきました。現在、日本で栽培されている品種には、ラ・フランス、バートレット、レッドバートレット等があり、それぞれの特徴と生産量に応じて分類されています。

例えば、ラ・フランスは「西洋なしの王様」と称され、主に10月に収穫され、果皮の変化があまり分かりにくいのが特徴です。生産量第2位のバートレットは、早生種として知られ、主に9月中旬に食べ頃を迎える果実です。その他にも、シルバーベルやスタークリムソンといった品種も存在し、それぞれに独自の風味や形状を持っています。

産地

世界のセイヨウナシの半分はヨーロッパで生産されており、特にイタリアが主な生産国です。日本では、山形県が主な産地であり、全体の約6割を占めています。冷涼な気候の地域が洋なしの栽培に向いているため、その他の主要生産地には長野県や青森県、新潟県、岩手県などがあります。

食べ方

セイヨウナシは、事前に追熟することで甘みが増し、食べごろになる果実が得られます。生食はもちろん、缶詰やリキュールなどにも加工されます。ただし、病害に弱いため、農薬が使用されることが多く、皮をむいて食べることが推奨されています。また、果実を蒸留酒に浸すことで、香り豊かな果実酒が楽しめます。

栄養価

セイヨウナシは血糖値の上昇が穏やかで、ソルビトールを含むため、健康に良いとされています。高血圧やむくみ防止に役立つカリウムも多く含まれ、さらに疲労回復や整腸作用を期待できる成分も含まれています。

総括

セイヨウナシは、用途や栄養的価値によって多様な楽しみ方が可能な果実であり、食文化の一部として根付いています。洋なしの味わいや食感をぜひ楽しんでみてください。

もう一度検索