セイント・エティエンヌ

セイント・エティエンヌ：30年を超える音楽の旅路

1990年代初頭、イギリスの音楽シーンに彗星のごとく現れたセイント・エティエンヌ。サラ・クラックネル、ボブ・スタンリー、ピート・ウィッグスの3人からなるこのバンドは、以来30年以上にわたり、多様な音楽性と独自のスタイルでリスナーを魅了し続けています。

彼らの音楽は、インディーズ・ダンス・シーンに深く根ざしながらも、クラブカルチャー、1960年代ポップス、その他様々な音楽的要素を巧みに融合。初期作品においては、1991年のデビューアルバム『フォックスベース・アルファ』に収録された「Only Love Can Break Your Heart」や「Nothing Can Stop Us」といった楽曲が、批評家から高い評価を受け、瞬く間に注目を集めました。これらの曲は、彼らの不朽の名作として現在も高く評価されています。

続くアルバム『ソー・タフ』(1993年)と『哀しみ色のムーヴィー』(1994年)は、イギリスのアルバムチャートでトップ10入りを果たす成功を収めます。「You're in a Bad Way」などのシングルは、チャートの上位にランクインし、バンドの人気を不動のものにしました。特に『哀しみ色のムーヴィー』では、テクノ・フォーク的な実験的なアプローチが試みられ、バンドの音楽的探求心と幅の広さを示しました。さらに、1990～1995年のシングルをまとめたコンピレーションアルバム『Too Young to Die: Singles 1990–1995』はゴールド認定を受け、エティエンヌ・ダオとのコラボレーションによる「He's on the Phone」は彼らのキャリアにおける最高のチャート成績を記録しました。

1990年代後半に入ると、セイント・エティエンヌは『グッド・ユーモア』(1998年)でインディー・ポップ色の強いサウンドへとシフト。「シルヴィ」はシングルとしてチャート12位にランクインするなど、新たな魅力を提示しました。

2000年代に入ると、彼らの音楽は更なる進化を遂げます。『サウンド・オブ・ウォーター』(2000年)ではアンビエントミュージックの影響が色濃く反映され、続く『Finisterre』(2002年)と『テイルズ・フロム・ターンパイク・ハウス』(2005年)では、初期の音楽的ルーツと新たなスタイルの融合が試みられました。

2010年代には、『Words and Music by Saint Etienne』(2012年)や『ホーム・カウンティーズ』(2017年)で、現代的なサウンドを取り入れながら、彼らの音楽的アイデンティティを保ち続けました。そして2021年発表の『アイヴ・ビーン・トライング・トゥ・テル・ユー』では、約20年ぶりにサンプリングを取り入れたことで話題となり、1994年以来最高のアルバムチャート順位となる14位を記録しました。このアルバムは、長年のファンだけでなく、新たなリスナーをも惹きつけました。

バンド名は、フランスのサッカークラブASサンテティエンヌに由来しています。日本においても、1993年にはNOKKOのアルバム『CALL ME NIGHTLIFE』と『I Will Catch U.』に楽曲提供を行うなど、国際的な活躍を見せています。NOKKOはインタビューの中で、ロンドンの自宅スタジオでのレコーディングについて触れ、セイント・エティエンヌが当時流行し始めたベッドルーム・レコーディングの先駆けであったと語っています。

セイント・エティエンヌは、デビュー以来、一貫して独自の音楽性を追求し、常に進化を遂げてきました。彼らの音楽は、時代を超えて愛され続け、音楽史に大きな足跡を残していると言えるでしょう。彼らの今後の活動からも目が離せません。

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