セッピョル-9 (航空機)

セッピョル-9：北朝鮮の新型無人機

2023年7月、北朝鮮は建国記念日の軍事パレードで新型無人機「セッピョル-9」を公開しました。その姿は、アメリカのMQ-9リーパーと驚くほどよく似ています。セッピョル-9は、北朝鮮が2021年に発表した国防5カ年計画で計画されていた無人攻撃兵器の一つだと考えられています。計画では、行動半径500kmの無人機が想定されており、セッピョル-9はその計画に基づいて開発された可能性が高いです。

開発と初公開

セッピョル-9の存在は、軍事アナリストの小泉悠氏率いるOSINTプロジェクト「DEEP DIVE」によって2022年10月に衛星画像から確認されていました。しかし、公式な発表は2023年7月の軍事パレードまで待たなければなりませんでした。パレードでは、実際に金日成広場上空を飛行するデモ飛行が行われ、地上にはさらに4機が展示されました。これは、少なくとも5機が製造されていることを示唆しており、量産体制に入った可能性も高いと考えられます。

MQ-9リーパーとの類似性

セッピョル-9は、MQ-9リーパーを模倣した設計であると推測されています。その類似性は外観だけでなく、性能面にも及ぶ可能性があります。推定される全幅は20メートル程度。一部報道によると、ヘルファイアミサイルや滑空誘導爆弾に似た兵器を搭載している可能性も指摘されています。この類似性から、北朝鮮が何らかの手段でMQ-9リーパーの設計図を入手した可能性も考えられます。サイバー攻撃による情報窃取が疑われています。

運用上の制約と用途

セッピョル-9の運用には大きな課題があります。それは、北朝鮮が現在、無人機の長距離遠隔操作に必要な通信衛星を保有していないことです。そのため、セッピョル-9の運用範囲は見通し線内に限定されると考えられます。この制約は、その軍事的な有効性を大きく制限する要因となっています。

また、セッピョル-9がアメリカ軍や韓国軍の航空戦力に対抗できる見込みは低いとされています。そのため、その具体的な使用用途については不明な点が多く残されています。偵察任務や、限定的な攻撃任務に用いられる可能性はありますが、戦略的な軍事力としての実用性は低いと考えられます。

セッピョル-9とセッピョル-4

セッピョル-9と同時に、偵察型の無人機「セッピョル-4」も公開されました。セッピョル-4はアメリカのRQ-4グローバルホークを模倣していると言われています。セッピョル-9とセッピョル-4の同時公開は、北朝鮮が無人機技術の開発に力を入れていることを示す強力な証拠です。

今後の展望

北朝鮮は、今後、セッピョル-9の技術改良や量産化を進めることが予想されます。しかし、通信衛星を持たないという制約は、その発展にとって大きな壁となるでしょう。また、アメリカや韓国による防衛システムの強化も、セッピョル-9の有効性をさらに低下させる可能性があります。セッピョル-9は、北朝鮮の軍事技術力の現状を示す象徴的な存在であり、その動向は国際社会の注目を集め続けています。

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