セバスキー陸上複座戦闘機

セバスキー陸上複座戦闘機の概要

セバスキー陸上複座戦闘機（セヴァスキーりくじょうふくざせんとうき）は、1937年に日本海軍によって導入されたアメリカ製の複座戦闘機です。この機体は、連合軍のコードネーム「Dick（ディック）」としても知られています。元々はアメリカ陸軍の制式機P-35を基にしたもので、その設計には革新的な特徴が数多く盛り込まれています。

1937年、中国の盧溝橋事件を契機に日中間の戦闘が激化しました。この状況を受けて、日本海軍は基地防衛や陸上からの護衛を行うための戦闘機を急遽輸入することになりました。具体的には、ハインケル112型陸上戦闘機（A7He1）とセバスキー陸上複座戦闘機（A8V1）が採用されました。特にセバスキー機はその後に続く陸上偵察機としての運用を考慮された重要な機体です。この機体の輸入は試験的なものではなく、制式機として位置付けられていました。これは、日本海軍が与える記号の構成にも反映されています。

設計と特徴

原型となるP-35は、アメリカ陸軍初の全金属製の戦闘機であり、引込脚（部分的に引込式）や密閉式の風防など、当時の最先端技術が取り入れられています。セバスキー陸上複座戦闘機は、このP-35に後部の銃手を追加した設計となっており、ペアで2名の乗員が搭乗できるという特長があります。

輸入と運用

日本海軍は1937年に20機のセバスキー陸上複座戦闘機を輸入し、中国大陸での攻撃隊の支援に派遣しました。しかし、戦闘機としての性能は期待に応えるものではなく、後に陸上偵察機へと転用されることになりました。一部の機体は民間に払い下げられ、朝日新聞に2機（汐風号J-BAAN、海風号J-BAAQ）、東京日日新聞に1機が譲渡されています。

技術仕様

この機体のスペックは以下の通りです。

• - 乗員：2名
• - 全長：7.75 m
• - 全幅：10.9 m
• - 主翼面積：20.45 m²
• - 空虚重量：1,900 kg
• - 全備重量：2,920 kg
• - 動力：P&W R1820-G3B エンジン
• - 出力：1,000 hp
• - 最大速度：490 km/h
• - 巡航速度：435 km/h
• - 航続距離：1,930 km
• - 実用上昇限度：9,150 m

武装については、前方に毘式7.7mm機関銃（機首固定）を2丁、後方に留式7.7mm機関銃（後方旋回）を1丁搭載しています。これらの武装は、敵機との交戦や地上目標への攻撃を可能にするものでしたが、運用の実績からはその限界も明らかになりました。

セバスキー陸上複座戦闘機は、戦闘機としての能力を超えた用途での運用がなされ、航空機技術の進化を示す歴史的意義を持った機体であると言えるでしょう。

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