セパレート型ステレオ

セパレート型ステレオとは

セパレート型ステレオは、1960年代半ばから1970年代半ばにかけて、ステレオ装置の主力製品として広く普及したオーディオシステムです。これは、レコードプレーヤー、アンプ、チューナーを一体化したセンターユニットと、左右のスピーカーを分離して設置できるように設計された点が特徴です。アンサンブル型ステレオ（一体型ステレオ）と並び、「モジュラーステレオ」や「家具調ステレオ」とも呼ばれることがあります。

構造とデザイン

セパレート型ステレオは、左右のスピーカーと、レコードプレーヤー、アンプ、チューナーが格納されたセンターユニットで構成されます。4チャンネルシステムの場合は、リアスピーカーユニットも加わり、合計5点となることもあります。典型的なデザインでは、木製の筐体が用いられ、ベニア板に化粧合板仕上げのものから天然木無垢仕上げのものまで、価格に応じてさまざまなバリエーションがありました。センターユニットの下部には、LPレコードを収納できるキャビネットが設けられている製品が多く見られました。

歴史

ステレオLPが初めて発売されたのは1958年、歌謡曲やポップスのEPシングル盤がステレオ化されたのは1961年頃です。当時、パーツを集めてステレオを自作する趣味がありましたが、レコードが高価だったため、一部の愛好家や富裕層に限られていました。その後、一般家庭への普及を目指し、電蓄をステレオ化したアンサンブル型ステレオが登場し、ステレオ普及期を迎えました。しかし、アンサンブル型は低価格を重視したため、スピーカーの分離が悪く、共振によるハウリングの問題、設置場所の自由度の低さなどの課題がありました。

1960年代の高度成長や音楽文化の普及、オーディオ技術の発達を背景に、これらの欠点を改善したセパレート型ステレオが登場しました。1960年に福音電気（現パイオニア）が発売した「PSC-1」がその先駆けです。セパレート型は、家具調のデザインで、リビングなどに設置され、家庭の教養や趣味を示すステータスシンボルとしての役割も果たしました。しかし、実際には、スピーカーとセンターユニットを並べて設置するケースがほとんどで、「設置の自由度」は、設置時の搬入のしやすさを意味する程度だったという側面もあります。1968年に登場した千円盤や4チャンネルシステムも追い風となり、一般家庭だけでなく、学校や公共施設にも設置されました。

初期のセパレート型ステレオは、従来の電蓄を分離可能にした程度の性能でしたが、後期にはカートリッジ交換可能なトーンアームや外部入力端子の装備、アンプのマルチチャンネル化、マルチウェイスピーカー搭載など、高機能化が進みました。しかし、1970年代後半になると、若い世代を中心に、より高性能なオーディオ装置を求める消費者が増え、コンポーネントステレオが普及しました。拡張性や柔軟性に欠けるセパレート型は、カタログの中でも安価な商品という位置づけになり、次第に姿を消していきました。

近年の動向

近年では、スピーカーとオーディオレシーバーユニットが分離した3ピース構造のCDラジカセやステレオラジカセ、CDプレーヤー内蔵オーディオレシーバーアンプとスピーカーシステムを組み合わせたミニコンポやハイコンポが、セパレートステレオの延長線上にあると言えるでしょう。これらの製品は、セパレート型ステレオのコンセプトを現代に受け継ぎながら、新たな技術やデザインを取り入れています。

関連情報

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