セミトレーリングアーム式サスペンション

セミトレーリングアーム式サスペンション

セミトレーリングアーム式サスペンション（英: Semi-trailing arm suspension）は、自動車が用いる独立懸架の一種で、特にFR（後輪駆動）レイアウトの車種において広く採用されています。このサスペンションでは、スイングアームが車軸の前方に取り付けられ、進行方向に対して斜めに設定されます。この設計により、旋回時の安定性向上が図られています。

概要

セミトレーリングアーム式は、スイングアームが車体に2点で回転可能に支持されています。スイングアームの回転軸は、車体中央に向かって後退する角度が持たれ、水平方向に対してはやや高く据えられることが一般的です。この構造により、旋回時に外側のタイヤのサスペンションが縮むと、キャンバ角がネガティブに、トーがイン方向に変化します。この特性を活かして、操縦安定性を高めることが目的とされています。

一方で、スイングアームが車軸より前方に支えられるため、旋回やブレーキングによる横方向の荷重が発生しやすくなります。その結果、スイングアームが中央に回転を試み、輪のトーがアウト方向に変化します。これにより、ステアリング特性がオーバーステア気味となり、操縦安定性が低下することがあります。このような挙動を改善するために、トーコントロールリンクと呼ばれる構造が新たに追加されることもありますが、本質的な問題が完全には解決されないため、マルチリンク式サスペンションに移行することが多くなっています。

歴史

このサスペンション方式は、1960年代から1980年代にかけて特にBMWによって広く用いられました。日本では、初めてセミトレーリングアーム式を採用したのは1967年の510型ブルーバードで、その後GC10型スカイラインでの使用が見られました。多くは、上位モデルに導入されていました。日産以外にも、トヨタはマークIIやセリカ、カリーナ、ソアラなど一部の車種に取り入れた実績があります。

軽自動車においても、ダイハツのフェローMAXやミラ、スバルのサンバーなど、複数の車種での採用があります。

補足事項

このサスペンション方式を採用した車両では大幅に車高を下げると、ネガティブキャンバーが顕著に現れる場合があります。特に後方から見るとタイヤが「ハの字」に見えることから、「ハの字シャコタン」と呼ばれることがあります。また、スイングアームの回転軸は多くの場合車軸より低く設定されており、これにより加速時にはスイングアームが前方で下がり、車体全体が後下がりになる傾向が強まります。このような特性を理解することは、車両の動きをより深く知る上で重要です。

関連項目

このサスペンションは、サスペンションジオメトリーやホイール・アライメントの理論に深く関わっており、他のサスペンション方式とも切り離せない関係にあります。特に、ストラット式やマルチリンク式など、他のサスペンション方式の理解も併せて行うことが、より高性能な車両の設計につながります。

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